図書オキナワ ケンミン ノ キゲン000062717

「沖縄県民」の起源

サブタイトル1~10
戦後沖縄型ナショナル・アイデンティティの生成過程1945-1956
編著者名
坂下 雅一 著者
出版者
有信堂高文社
出版年月
2017年(平成29年)2月
大きさ(縦×横)cm
22×
ページ
416,20p
ISBN
NDC(分類)
219.9
請求記号
219.9/Sa36
保管場所
閉架一般
内容注記
文献あり 索引あり
和書
目次

序章
 はじめに/分析アジェンダ/分析舞台と仮説、作業内容/分析枠組―その眼目と制約/先行研究との相違/構成/「琉球」、「沖縄」、琉球・沖縄、の表記原則/その他の用語法

第Ⅰ部

第一章 理論的前提
第一節 事件史的ナショナリズム分析の視座
 理論課題としての方法論的ナショナリズムと集団主義/認知的視覚/ブルーベイカーの民族・ナショナリズム論/事件史的ナショナリズム分析の基本枠組/事件史的ナショナリズム分析の意義と発展性/社会運動論のフレーム分析視覚の有用性
第二節 分析枠組の設定
 基底的な分析概念・枠組/「我々カテゴリー」+「理念」=ネーションのヴィジョン/エスニシティとネーション/琉球・沖縄の「自治」「経済自立」/複合ヴィジョン/ナショナル・アイデンティティ(schema)とフレーム(frame)の基本関係/ナショナル・アイデンティティの統合機能/枠組1 「支配者」-「我々」間の政治認識闘争(縦の相互作用)/枠組2 「我々」内の政治認識闘争(横の相互作用)/枠組3 「我々」と「外部」との相互作用(三項連関図式)

第二章 前史―近代沖縄型「ネーション」の生起
第一節 論述の前提
 はじめに/近代的「我々観」生成におけるエポックとしての日清日露戦争/琉球列島のエスニックな耐用性と「琉球人」「沖縄人」カテゴリー
第二節 グローバル・リージョナルレベルの「世界観」の転換と琉球・沖縄
 「近世」における沖縄群島の「世界観」=「我々観」/近代ナショナリズムのグローバルダイナミクスと琉球・沖縄
第三節 「民族内民族」としての「琉球民族」の誕生と「自治」「沖縄県民」
 はじめに/日清日露戦間期に「留学生」が置かれた社会文脈/代表的「留学生」太田朝敷/太田朝敷における「統合」と「差異化」の交錯/興隆する「自治」理念の内実/「琉球民族」の登場/まとめ

第三章 舞台―「戦時占領期」の政治・社会と「我々観」の揺らぎ
第一節 戦争被害と基地建設、統治政策と生活世界の変動
 「戦後」の政治展開の規定要因としての沖縄戦/三つのキーワードから見た米軍統治政策の鳥瞰図/琉球政府以前の「政治」の制度的変遷/琉球政府以前の経済政策の展開/消費生活の変化と「都市」「多文化」の形成
第二節 「我々観」の揺らぎ
 米軍による「日本・日本人」-「琉球・琉球人」関係の理解/「公的カテゴライゼーション」として「琉球」のインパクト/複合ヴィジョンの機能停止と「離日」「帰日」言論の始まり/日本から「沖縄」への「政治」の伝播/ナショナル・アイデンティティの状態

第Ⅱ部

第四章 「自治」「経済自立」理念の表出(一九四五-一九五〇)
第一節 一九四〇年代における「自治」「経済自立」理念の登場
 「自治」理念をめぐる「戦前」と「戦後」の政治環境の相違/「自治」の表出/「自治」のマスターフレーム化/「自給」から「経済自立」へ
第二節 一九五〇年代における「自治」「経済自立」理念の展開
 生活苦の緩和による米軍政評価の一時的好転/「自治」の対抗理念としての性格の一時的弱体化/米軍の琉球統治指針の確立と「経済自立」の「理念道具」的活用/平良辰雄の知事当選と「経済自立」ブーム/まとめ

第五章 「脱基地経済」理念の生成と「自治」の「高揚」(一九五一-一九五二)
第一節 始動する「経済自立」の「脱基地経済」化
 「自立経済計画」の顛末に見る沖・米「経済自立」理解の齟齬/戦後沖縄型「経済自立」理念の兆し
第二節 米軍主導の政治制度改革に対する幻滅と「自治」の高揚
 群島政府の「自治」に対する評価の反転過程/「自治」理念の「フレーム補足」による「高揚」過程/まとめ

第六章 「復帰」理念の表出と高揚(一九五一-一九五二)
 はじめに
第一節 「復帰」の「構造要因」
 沖日政治指導者間の交流増大と「日本情報」の流入 /一九五一-一九五二年における「沖縄」・日本・米国の三項関係/在日沖縄人政治アクター/「復帰」のプル要因としての対日貿易の始動/「社会・教育関係政策財源問題」における「復帰」のプッシュ要因/「教育・社会政策財源問題」における「復帰」の「プル要因」/戦災校舎復興問題の復帰運動への関連
第二節 「復帰」の表出・高揚の事件史的展開過程
 一九五一-五二にかけての「帰属問題」の通史的把握/「第二の引き金」としてのresidual sovereignty/「復帰」理念のリフレーム/質的変化1 「救済者日本」の登場と「域内問題」と「対日問題」の境界消滅/質的変化2 「『日本人』の成員資格の維持」というアジェンダの登場/residual sovereigntyの政治コミュニテーション的ダイナミクス/日本側による「残存主権」的理解と「沖縄」への伝播/まとめ

第七章 「自己決定」の行方―「離日」消滅と複合ヴィジョン再生
 はじめに
第一節 「離日」の消滅
 転換点としてのサンフランシスコ講和会議/復帰反対論の特徴1 「オール沖縄」的な「離日」勘定の代弁性/復帰反対論の特徴2 「日本人」の前提化と「民族自決」の不在/論争内容の時代的特徴/復帰反対派の政治・経済構想/復帰反対論の「経験的信頼性(empirical credibility)」の衰退
第二節 複合ヴィジョン再生に伴う「自己決定」のリフレーミング
 琉球・沖縄人の「自己決定」と「日本・日本人」への「復帰」の接合/主体性喪失への警戒感/複合ヴィジョンに付随する「緊張」の封印/複合ヴィジョンのオルターナティブフレーム/まとめ

第八章 抵抗主体としての「沖縄県民」の生成(一九五二-一九五六)
 はじめに
第一節 一九五〇年代中頃の政治情勢
 当該期の参考連関構図/国際情勢の「沖縄」へのインパクト/当該期の主要な政治アクター/抗米の諸文脈/人民党をめぐる「政治」の事件史的展開(一九五二-五四年)
第二節 土地闘争と「復帰」の高揚、「沖縄県民」の再表出・再主流化
 軍用地問題の事件史的展開過程(終戦直後から一九五四年まで)/人民党による「沖縄県民」の使用再開/「朝日報道」、「伊江島・伊佐浜」から「島ぐるみ闘争」へ/「沖縄県民」興隆の原因/まとめ

終章

 結論/一般理論的インプリケーション

補節 「自給」「経済自立」のナショナリズム思想的起源
 公分母としての「外部統制・依存から脱却」≒「内的統制の確立」/「外部の統制・依存から脱却」≒「内的統制の確立」の理念の起源と展開/「自治」と「経済自立」の起源

あとがき

参照文献/索引 巻末