自壊の病理
昭和陸軍・自壊の病理
第I部 戦争指導―戦略とガバナンスの不在
戦争指導の三つの視点
はじめに
戦争目的の確立
進軍限界の規整
戦争終結の把握
むすび―世界戦争を戦わなかった日本
戦争指導者としての東條英機 戦略と権力の不在
はじめに―「戦争指導者不明」
制度の拘束
東條の戦争指導スタイル
イギリス屈服策―代替構想なき戦争終結の鍵
インドとビルマ―政謀略の対象
むすび―つくり出せなかった状況変化
辻政信 優秀なれど制御能わざる人材の弊害
はじめに―独断専行と幕僚統帥
「作戦の神様」―マレー作戦の場合
関東軍の独断専行―ノモンハン事件
一介の少佐参謀の影響力
要職への返り咲き
限度を超えた独断専行―ガダルカナル島の戦い
むすび―組織の理念と普遍的価値のバランス
勝敗なき戦場 華中日本軍の膠着
はじめに
漢口作戦
「治安第一主義」
宣昌作戦
「短切なる」作戦
おわりに―華中の戦いの特徴と戦場の膠着
第II部 変質―政治化のメカニズム
統帥権独立の呪縛
統帥権独立の目的
明治期の政治と軍事
軍の自立化と政党政治
軍の政治化
むすび―現実化しなかった柔軟な制度運用
政治化の伏線 大正期陸軍軍人の意識構造
転換期としての一九一〇・二〇年代
軍人の社会的境遇
社会教育者としての軍人
軍人と「デモクラシー」
軍人の社会的地位の低下
一九三〇年代への展望
陸軍軍人はなぜ政治化したのか 戦前日本の政軍関係
はじめに―世界中で「最も政治的な軍隊」?
制度―統帥権の独立
制度の運用―政軍対立の虚実
専門職化―非政治化の論理?
衛兵主義―支配の正統性が弱まるとき
動機+情動+機会―政治介入の条件
新専門職主義―軍人の役割拡大
むすび―歴史研究と理論研究との架橋
第III部 漂流―大局観なき対外政策
「国民政府ヲ対手トセズ」 近衛声明の謎
はじめに―なぜ「対手トセズ」なのか
長期戦決意の表明
否認論の圧力と世論対策
二つの解釈―「黙殺」と「否認」
むすび―政府解釈の拘束
陸軍の日独同盟論 対ソ軍事バランスへのこだわり
対ソ軍事バランスの悪化
「次期世界戦争」の発生抑止
支那事変長期化からの脱却
イデオロギー的性格の稀薄さ
むすび―独ソ不可侵協定成立を受けて
独ソ不可侵協定は想定外だったのか 「複雑怪奇」の舞台裏
日本を震撼させた「背信」
存在していた情報
微妙な齟齬―ドイツ大使館付海軍武官の情報
ヒトラー演説・リトヴィノフ解任―ヨーロッパ駐在外交官の分析
生かされなかった電報―白鳥イタリア大使
おわりに―目覚めなかった陸軍
構想力なき戦争 大東亜戦争のなかの支那事変
重慶屈服への期待
南京政権の強化
重慶政治工作の試み
定見なき対中政策―対ソ工作の陰
むすび―デザインなき対応
あとがき
注
人名索引