多田駿伝
プロローグ―〝終の住処〟を訪ねて
館山にて/「惜しい人材を失った」/石原莞爾との関係
序章 参謀次長の涙―「日中和平」ならず
「不拡大派」の中心的存在/回答期限は「十日以内」/たった一人の反論/児島襄が描いた攻防/一方的に「対手とせず」
第一章 「弱い者いじめ」が大嫌い―仙台から満洲・天津へ
下戸の甘党で釣り好き/陽明学徒として/「支那通」軍人の系譜/「弱い者いじめ」が大嫌い/満洲に渡るまで/満洲国軍最高顧問/「支那通」の右腕とともに/満洲に見た理想/ラストエンペラーと男装の麗人/「わが家の一員」だった芳子/司令塔として天津へ/
「多田声明」の余波/もう一つの多田声明―「対支基礎的観念」/親日的中国人への警鐘/帰国、そして中央へ
第二章 不拡大派〝最後の砦〟―「中国通」参謀次長の本懐
参謀本部という存在/特権意識生んだ「統帥権の独立」/近衛内閣の誕生/参謀本部内の路線対立/海軍で高まる強硬論/参謀次長就任直後/頭山満にも交渉を依頼/石原転出の舞台裏/トラウトマン工作/外交ルートへの転換/大本営設置の意図/南京攻略に強く反対/
強気の政府が和平をしぶる/吊り上げられた講和条件/追い詰められる「不拡大派」/御前会議と天皇の意思/問われた「中国の誠意」/運命の大本営政府連絡会議/〝最後の砦〟多田の陥落
第三章 失われた良識―熾烈な権力抗争の中で
不拡大派の混乱/「良識派」米内の実像/幻の「近衛・多田」会談/「近衛声明」の後で/秩父宮の進言と電報の遅配/動揺を怖れた蔣介石/武力重視の内相・末次/辞職願を留めた理由/汪兆銘工作と河辺の転出/陸相更迭に関する顚末/陸軍に苛立つ天皇/
「対手とせず」声明の撤回/繰り返される派閥抗争/東條VS石原・多田/「参謀次長」としての評価
第四章 幻の陸軍大臣―東條英機の対極として
ノモンハン事件への警告/陸軍大臣推薦の経緯/派閥抗争から遠く離れて/もし多田が陸相だったら/統治の基本は「悦服」/軍人らしくない軍人/「権謀術策」は中国人が上/中国共産党との対決/「迷悟洞涓滴」の見識/皮肉とユーモアと/東條から下された待命/そして離任/
再びの「全体主義」批判
第五章 房総での閑日月―自責の念を抱えた将軍
「若い人が住む場所じゃない」/石原莞爾との親交/多田の政府批判/教え子の死と反戦の想い/東京裁判の証人として出廷/記録に残された証言/中国人同志たちを想う/自省の末の最期
終章 相馬御風への手紙―良寛を介して溢れる心情
参謀次長の〝ファンレター〟/若者は「身命を惜しめ」/敗戦後の葛藤
エピローグ―友とともに
多田駿 略年譜
あとがき
参考文献