性を管理する帝国
凡例
序章 公娼制度下の暴力は、なぜ廃絶できなかったのか?
問題の所在
先行研究と本書の課題
第一章 軍隊の性病問題とスケープゴートとしての娼妓
医学知の輸入と性病検査
公娼制度の再編過程に見る性病の問題
〈婚外の性〉の一元化
第二章 廃娼運動の始まりと女性の周縁化
廃娼建議と「衛生」の論理
「姉妹同胞」としての娼妓
男性に占められる廃娼運動と買春男性批判
第三章 国境を越える性の売買と日清戦争
日本人移民の「密売淫」を取り締まる法の制定
「海外醜業婦」の社会問題化
「授産」事業による娼婦の「救済」
従軍看護婦の理想化
第四章 庶民の性病観と差別意識
蔓延する性病と売薬
梅毒患者の〈黒い肌〉
〈白い肌〉の「文明」/〈黒い肌〉の「野蛮」
生殖力を脅かすものとしての淋病
男性不妊と買春の問題化
第五章 娼妓を〈労働者〉にする戦略
公娼廃止か娼妓の権利か
可視化される娼妓虐待
娼妓を〈労働者〉と見なす法廷闘争
娼妓を「救済」する「軍隊」
第六章 軍隊と廃娼運動の癒着
日露開戦と矯風会軍人課
矯風会の愛国婦人会への対抗意識
「軍人」化する女性たち
第七章 日露戦争と占領地へ拡大する公娼制度
遊廓増設問題と廃娼運動の全国化
満洲軍政下の公娼制度導入
満洲の「婦人救済」運動
第八章 性別編成される廃娼運動
男性に啓蒙される女性という構図
廃娼運動団体・廓清会の創設
美人=芸妓問題と「奥様」批判
矯風会の女性運動化
第九章 〈男らしさ〉の優生思想
「文明」化された〈男らしさ〉
『廓清』の「人種改良」論
廃娼論者の断種論
終章 帝国の軍隊に取り込まれた公娼制度と廃娼運動
アジアへの侵略戦争と公娼制度の近代化
近代公娼制度を支持したのは誰か?
帝国主義の女性差別
参考文献
あとがき
初出一覧
索引