昭和の戦争
はじめに
なぜ昭和の戦争なのか?/異なる選択の積み重ね/なぜ日記なのか?
第I章 張作霖爆殺事件
爆破された列車/決めかねていた斎藤恒関東軍参謀長/「運命の神」が見捨てた―宇垣一成の情勢判断/対中国「積極政策」批判/宮中の状況/天皇の不信感/二重外交/不発に終わった謀略の意図/反転攻勢のチャンス―民政党の状況認識/足下の難/行き詰まる対中国外交
/田中義一の意思/小川平吉の反対/議会での論戦/動揺する田中義一/意思決定の混乱/天皇の叱責
第II章 満州事変
柳条湖事件が勃発した時/天皇の意向/関東軍と「不拡大方針」/「内閣の致命傷」―外務省/関東軍の賭け/協力内閣構想/民心離反の恐れ/協力内閣構想の挫折/後手に回る犬養内閣/自信家松岡の不安/熱河作戦/国際連盟脱退通告/「非常時小康」
第III章 日中全面戦争
「此度は簡単に終った」―盧溝橋事件/無気力な政党/広田外相と東亜局長の深い溝/盧溝橋事件直後の劇場/「いかんともいたしかたなし」―近衛内閣/閉ざされた和平工作―「国民政府を対手とせず」/長期戦下のロッパの美食/脆弱な戦時経済体制/前線と銃後の亀裂
/宇垣外交への期待/近衛新党構想の立ち消え/両翼をもがれた宇垣外相
第IV章 第二次欧州大戦
「世界の風雲よ、動け、動け!」―第二次欧州大戦の勃発/国際新体制と国内新体制の模索/荷風が見た洋装の女性―物資不足と軍需景気/汪兆銘工作の前途多難/斎藤隆夫の「反軍演説」/第二次近衛内閣の成立/近衛新体制/大政翼賛会―帝国憲法との矛盾/日独伊三国同盟の調印
/大政翼賛会の末路/失われた戦争終結の展望/日米交渉と日ソ中立条約―外交の転換
第V章 日米戦争
「日米開戦の噂しきりなり」―日用品の不足・防空演習/「肉なしデー」―美食家ロッパの食膳/「虎穴に入らずんば虎児を得ず」―東条内閣の成立/開戦回避の障害/両論併記/ハル・ノートと日本側のギャップ/開戦の日/真珠湾攻撃―勝利者の気分
/「憤怒の固い統合」―アメリカの対応/緒戦の勝利/終夜運転も除夜の鐘もない大晦日/年賀状のない正月/対独伊不信/日中全面戦争の継続/陸海軍の対立
第VI章 アジア太平洋戦争
戦争目的の再定義/矢部貞治の「大東亜新秩序」構想/学生からの冷笑/急速な戦況の悪化/植民地の独立と軍事戦略/日中全面戦争の行方/シンガポールの井伏鱒二/日本の歴史の講義など不要/ビルマの高見順―現地人への指導者意識/大東亜共同宣言
/大東亜共栄圏の共通語は敵性語/大東亜共栄圏の幻/サイパン島陥落という分岐点/東条内閣の退陣/権力基盤を持たない小磯内閣
第VII章 敗戦
憤慨と諦め/極限の下方平準化/軍事戦略の喪失/小磯内閣の崩壊/海軍「穏健派」鈴木貫太郎/和平を求めるのか戦争を継続するのか/日ソ中立条約不延長通告の意味/ヒトラーとムッソリーニの死という「悲報」/本土決戦準備/六月八日の御前会議/天皇が開いた「懇談会」
/抱きつづけた期待/「大凶日。屈辱へ」―原爆投下とソ連参戦/二つの「聖断」/突然の敗戦/「容易ならぬ事態」/敗戦国日本の戦後
おわりに
立憲君主制の危機の時代/「ファシズム」と民主主義は紙一重/全体戦争の全体像
参考文献リスト
あとがき