魂の昭和史
1 魂の震えとしての歴史(あらゆる時代を超えて)―魂の核心で感じる、それが歴史を学ぶということ
歴史のもっとも大事なことは 共感ということなんだ
無味乾燥な知識を ときほぐしてみよう
君たちが、君たちであることを 保証するもの
個人は千差万別でも 底に共通するパターンがある
君が、日本人だからこそ 豊かな生活ができるんだ
自分にかかわる事として 歴史を感じたことがあるかい
2 江戸時代の意味(17世紀~19世紀中頃)―世界史に例のない平和で文化的だった時代
こんなに幸福な時代を 持っている国民はいない
平和で、安定していて、文化が発展した
この三〇〇年間の蓄積が 明治維新の原動力になったんだ
3 明治時代について(19世紀後半~1890年代)―残酷きわまる世界のなかで、命がけで走り続けた
なぜ西欧は、東洋の片隅の 日本までやってきたのか
独立を保っていたのは 日本とタイとエチオピアだけ
白人だけが人間で 有色人種は動物なみだったんだ
植民地になってもいいと 君たちは考えるだろうか
戦争を通してしか 自分として生きることができなかった
貧しかったんだね たくさんの子供が死んだ
4 日清、日露戦争(1894年~1910年)―独立を守るため戦争をしなければならなかった
なぜ日本と中国が 戦争をしなければならなかったのか
独立を守ろうという気力があったから 大国の清に勝てた
なぜ日本は大国ロシアと 戦争をしなければならなかったのか
近代のなかで初めて 白人の国に、アジアの国が勝った
日本と朝鮮半島の 問題の核心とは何か
5 昭和の始まり(1910年代~20年代末)―世界秩序の変化に気づかなかった日本の悲運
第一次世界大戦とは 世界秩序の破壊だったんだ
日本がついに追いついたとき 世界のルールが変わっていた
ベルサイユ講和会議で 日本はすこし浮かれていたんだね
一流国のつもりだったけれど 日本は何も発言できなかった
日本が世界で初めて 人種平等を主張したんだ
日本の経済的自立を支えた リーグそのものがなくなってしまった
その一方でアメリカには システムを運営する認識がなかった
アメリカ発の世界的大不況、各国が保護貿易に向かう
6 満州国とは何か(1930年代初頭)―独自の道を歩み始めた日本と、西欧の鋭い対立
なぜ日本は 満州国をつくったのか
満州は近代になって開かれた 国際的フロンティアだったんだ
日本は満州に 一種の合衆国をつくろうとした
軍隊はほんとうに 封建的で不合理だったのか
満州に独自の空間をつくろうとしたとき 西欧との鋭い対立が始まった
単純に侵略だったと 切ってしまうわけにはいかない
満州国がなければ 今の君たちの豊かさもなかったんだよ
7 昭和前期について(1920年代後半~30年代)―ひどい貧困のなかで新しい国家のデザインを模索
新しい国内体制が見つからず 迷走状態に入ってしまった日本
君たちと同じ歳の女の子が 家族のために売られたんだ
共産主義がなぜ あれほど魅力的だったのか
2・26事件とは 新しい国をつくろうとする試みだった
何も選択できなかった日本は マネージメント管理に陥った
西洋の夢から醒め 喪失感、索漠感が流行したんだ
このままではダメだけれど、新しい目標も見えない
8 大東亜戦争とは何か(1930年代後半~45年)―勝ち目のない戦争に進まざるをえなかった悲しさ
なせ日本は支那事変へと 進んでいったのか
日本軍の戦争の仕方は 悲しいほど悲惨だった
負けると知っていた戦争に なぜ日本は進んでしまったのか
役人にとっては 戦争をつづけた方が楽だったんだ
誰でも戦争が嫌なのに なぜ戦争がおきてしまったのか
アジア解放を信じて 死んでいった若者がたくさんいた
もし自分がその場にいたら 戦争を止められただろうか
9 占領は日本を変えたか(1945年~51年)―わかりやすい目標が生まれ、変な陽気さがあった
民主主義が入ってきたというより もとに戻っただけのこと
占領下だというのに なぜか明るかったんだ
国家体制まで変えるという 予想もしなかった国際法違反
デッチあげの憲法がもつ 本当に深刻な問題とは何か
アメリカはアジア情勢を まったく読みちがえていたんだ
占領政策が日本を 自分たちの味方にすることに変わった
北方領土問題とは ソビエトと仲よくさせない仕掛けなんだ
10 高度経済成長(1951年~60年代)―経済発展が国民に一体感を与えた幸福な時代
戦後の民主主義を支えたのは モノへの憧れだったんだ
戦後の平和が保持されたのは 心がけがよかったからじゃない
なぜ日本はふたたび 経済的な発展ができたのか
悲惨な貧困がなくなって いろいろな問題が解決した
新しい文明の形を 日本はつくってみせたんだ
11 繁栄と新たな混迷(1960年代後半~70年代)―モノの憧憬が終わりサブカルチャー時代が始まる
沖縄返還と同時に 新たな混迷が始まる
アメリカの優越が 絶対的なものではなくなってしまった
公害問題や石油ショック、近代文明も終わりだという終末観
個人的な不安が広がり 政治運動は退潮していく
サブカルチャーの時代が来て 本当の戦後が始まった
12 平成時代について(1980年代~現代)―冷戦の終焉、ふたたび日本の前提が崩れはじめた
バブルは嘆かわしかったけれど 日本人の視野を広げてくれた
平成を迎えるころから 戦後の日本の前提が崩れてきた
自衛隊の存在そのものを まともに論じないやり方はおかしい
愛国心で過去を見ることが 大事だと思う
誰かが責任を持って支えないと 自由貿易体制は潰れてしまう
13 そして今(戦後の目標を超えて)―昭和と同じ道を歩まず、新しい構想を示せるか
僕たちが生きている今の日本は、昭和はじめの日本とまったく同じなんだ
先が見えないという不安は 抜き差しならないところまで来ている
新しい構想を 日本は示せるだろうか
自分として生きるために 歴史を知ることが必要なんだ
君が「売春をしたっていい」と言えるまでになるのに どれだけの蓄積が必要だったか
後記
参考文献
文庫版あとがき
解説―共感とともに受け止めるもの(上島嘉郎)