今井正
はじめに
第1章 今井正の評価をめぐって
1 本書のねらい
2 今井正略史
3 今井正をめぐる先行研究
第2章 軍国と反軍国のあいだ
1 対立と交渉のメロドラマ 『沼津兵学校』
(1)一九三九年前後の「歴史映画」をめぐる言説
(2)盲蛇におじず
(3)帝国の空間 「崩壊するものと前進するもの」
(4)開かれた空間と閉じられた空間
(5)今井正の「心のなか」
2 軍国的ファミリー・メロドラマ 『われ等が教官』
(1)軍神もの
(2)軍国的ハッピー・エンド
3 帝国の生産性 『多甚古村』
(1)「映画の使命は国民指導にある」
(2)「完全な失敗作」
(3)帝国の架空の空間
(4)カメラを回し続ける
4 あるべきメロドラマ 『女の街』
(1)銃後のあるべき姿
(2)「誰が何と言おうと平気ですわ」
(3)ラジオを切る
5 『閣下』
6 健全なクリシェ 『結婚の生態』
(1)映画の「臨戦態勢」
(2)相次ぐ「悪評」
(3)結婚のクリシェ
7 帝国の態度と言及 『望楼の決死隊』
(1)映画の「決戦」
(2)朝鮮ロケの日本版『ボー・ジェスト』
(3)「帝国」を投影する
(4)「植民地」を投影する
8 背を向ける 『怒りの海』
(1)苦悩する軍艦の父
(2)フィルムを削る
9 帝国の視線と植民地の凝視 『愛と誓ひ』
(1)今井正の沈黙
(2)疑似家族関係
(3)重層的テクスト
第3章 欲望と限界のあいだ
1 矛盾と混乱
2 二つのテーマ 反戦と弱者
3 反戦 『また逢う日まで』
(1)東宝争議という転換点
(2)現実と、それに抵抗する非現実
(3)抑圧されたものの帰還
4 反戦、そして弱者 『ひめゆりの塔』
(1)『ひめゆりの塔』をめぐる言説
(2)対立する二つの「声」の狭間で
5 弱者、あるいは他者 『あれが港の灯だ』
(1)植民地他者への思い
(2)境界線のアイデンティティ
(3)重なる他者への記憶、パランプセスト
おわりに
註
今井正の再発見(四方田犬彦)
あとがき
主要参考文献