ジャズ昭和史
第一回 日本にホンモノのジャズがやって来た時
歴史とは人それぞれ異なるもの、これは僕のジャズ昭和史
ジャズは白人のもの? 誰も黒人ジャズを意識しなかった
一九五〇年代後半、アメリカの黒人意識の変化をジャズは反映する
植草甚一ジャズに熱中、日本ジャズ評論界に新風を吹込む
第二回 慶応予科の一学生、ジャズにめざめる
洋画を通じて洋楽の魅力を知り、そしてジャズとすれ違う
誰もが暗中模索でポピュラー音楽を楽しんでいた時代
名著『ホット・ジャズ』を入手し、一晩でジャズ開眼する
榛名静雄の「ダンスと音楽」誌に最初の依頼原稿を書く
第三回 洋画とジャズと戦雲の中の青春
先輩野口久光の知遇を得、早大生河野隆次と意気投合する
河野君と情報交換してあちこちのジャズ喫茶に名盤を求める
開戦前夜、千住の河野君宅にブルーノート盤が漂着する
戦雲の中のナン・ウィンへの恋、そして戦下のジャズ・ファン
第四回 ラジオと進駐軍にジャズを求めたころ
蓄音器に座ぶとんをかぶせて聴いたSPレコードがすべて灰に
占領軍のジープに驚いてデューク・エリントンを思う
NHKとFENを頼りにジャズ・ファンを再開する
駐屯地の米兵と親しくなりジャズ誌やジャズ書を手に入れる
第五回 (ゲスト:石原康行) 「ホット・クラブ」創立秘話・前編
求め回った米軍の戦地慰問用レコード、Vディスク
奇人変人を見たければ中古レコード屋の親父に会え
上野の「イトウ・コーヒー」を舞台に「ホット・クラブ」誕生
第六回 (ゲスト:石原康行) 「ホット・クラブ」創立秘話・後編
戦時中の「ジャズ・ファン残酷物語」は実在したのか?
ホット・クラブ、『ジャズの歴史』を監修し大成果を生む
評論家やレコード、放送業界人を輩出し現在に至る
第七回 畏友河野隆次とレコード業界裏話
河野隆次、ビクターに入社し日本最初のモダン・ジャズを録音
日本にバップを持ち込んだジミー荒木少尉との奇妙な出会い
松下幸之助、ズボラ集団のレコード会社を一喝する
数々の大ヒットを飛ばした河野プロデューサーの奇策
第八回 (ゲスト:中村宏) わが国初の「ジャズ講座」と舞台裏
日本の大学で初めてジャズに正面から取り組んだ慶応「ジャズ講座」
第一次ジャズ・ブーム後の、理論的にジャズを聴こうという気運
頓挫したNHKのジャズ・レコード・ライブラリー総データ化計画
第九回 (ゲスト:ジョージ川口) 空前のジャズ・ブームの真実・前編
満州航空乗員養成所の若き副教官、墜落するも九死に一生を得る
指名手配中の大連の人気ドラマー、命からがら故国に戻る
もっと金とジャズ、高給でゲイ・クインテットに引き抜かれる
第十回 手探りのファンを導いた欧米のジャズ書
戦前の二大名著、『ホット・ジャズ』と『ジャズメン』
黒人ジャズを理解する国イギリスの名音楽紙「メロディー・メイカー」
好著『ジャズ・ブック』翻訳と「ミュージック・ライフ」連載
版を重ねる『ジャズの歴史物語』と後の集大成『ジャズの歴史』
第十一回 (ゲスト:ジョージ川口) 空前のジャズ・ブームの真実・後編
人気のGK(ジョージ川口)、尊敬するGK(ジーン・クルーパ)と会う
ゲイ・セプテットとシックス・ジョーズからスーパーバンド誕生!
時代のファッションもリードしたスーパーバンド、ビッグ・フォー
第十二回 (ゲスト:秋吉敏子) アメリカに架ける橋
オスカー・ピーターソンに助けられて「バークリー音楽院」に留学
ロスに寄り道、ジャズ・シティでマイルス・クインテットを聴く
ジャズ界に貴重な異国の女性としてバークリーの宣伝を担わされる
異国の女流ピアニスト仲間、ユタ・ヒップと三十年ぶりに再会
第十三回 『ジャズ昭和史』前史・前編―日本ジャズ界の夜明け
日本のジャズの流れは上流家庭の子弟の関心から始まる
ある大衆音楽が上流階級を通じて流布される世界的事実
大のエリントン狂だった英王室の「世紀の恋」の主人公
第十四回 昭和ジャズ音盤変遷史
主力の日本ビクター、日本コロムビアとラッキー・レコード
新興デッカ・レコードをポリドールが獲得するが
SP時代の一曲単位のジャズ喫茶を思えば今は退屈
戦後間もなく、CBS対RCAの長時間レコード競争
ラジオ局のエンジニアさえLPを知らなかった
ジャズの長時間録音の可能性を読み切れず、EPを選ぶ
第十五回 (ゲスト:牧芳雄) JATP来日騒動記
ラジオ関西の生番組で期せずして電リクを発明する
タイヘイ・レコード、マーキュリーを獲得しJATP発売
〈パーディド〉に乗って、羽田から寒空のオープンカー・パレード
第十六回 『ジャズ昭和史』前史・後編―ジャズメン、関西へ
大阪のダンス・ホール・ブームとチェリーランド・ジャズ・バンド
奇術師松旭斎天勝が連れ帰った本場シカゴのジャズ・バンド
チェリーランド、天勝バンド、神戸の南里文雄、浅草電気館に集結
第十七回 『ジャズ昭和史』の二十世紀文化的背景
二十世紀文化のハイライトを形成する一九五〇年代後期
二十世紀的なさまざまな文化が変動のピークを経験
映画産業が生んだウエスト・コースト・ジャズとその限界
ピークを極めたモダン・ジャズ文化の伝播の同時性
第十八回 (ゲスト:レイモンド・コンデ) 最初の名門ジャズ・バンド、ゲイ・セプテット
盲腸を切りに来日、早稲田で学びながらジャズマンに
結婚して帰化、日本人ミュージシャンとして過ごした戦下の日々
グッドマン・コンボを手本にしたオールスター・バンドの誕生
第十九回 ロックウェル・レコード物語
日本人によるジャズを! ロックウェル・レコード誕生
ディキシー、スイング、モダン、一九五〇年代の三枚のEP
通信販売で自宅で梱包し発送、各二百枚を完売
渡辺貞夫を含む藤井英一カルテットの未発表LP録音
第二十回 「モダン・ジャズ名盤蒐集会」の仕事
処分されたチャリティ・レコード、幻の『エリントン・イン新潟』
ハード・バップよりも『真夏の夜のジャズ』の白人ジャズが主流
第一回にUAのアート・ファーマー『モダン・アート』を選定
第二十一回 「名盤蒐集会」とジャズ・メッセンジャーズ
パリでライヴ録音されたもうひとつの〈モーニン〉
トップ・ランク経由のブルーノートとの契約を断念
『サンジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ』はいかに売れたか
各界の注目を浴びたジャズ・メッセンジャーズ初来日
第二十二回 (ゲスト:中平穂積) ジャズ喫茶黄金時代がやって来た
伝説のジャズ喫茶「DIG」、新宿のビル三階に開店す
第二店渋谷「DIG」のレコード盗難、『マタドール』事件の真相
オリジナル盤こそジャズ喫茶の命、これぞ往年のヒット盤
最終回 ジョン・コルトレーン以降
大感動の来日公演、コルトレーンは今も生きている
フリー・ジャズはここまで来ちゃったなあ、という時代
従来のジャズの解体と『ビッチズ・ブルー』の示した道
トミー・フラナガン『オーヴァーシーズ』に始まる幻の名盤ブーム
タクト、TBMが先陣を切った本格的邦人ジャズ録音
不遇の時代を支えた日本のファンの共感がジャズの明日を育む
油井正一自叙伝もうひとつの昭和史
プロローグ~昭和十年、春
第一章 ジャズとの出会い
「新映画」フォアイエの会
戦後の淀川長治さんのこと
「新映画」の岡俊雄君と「東和」の野口久光さん
『雪国』の芸者駒子に会う
買って損したレコード
心を捉えたスイング・ミュージック
一冊の『ホット・ジャズ』が変えた人生
改めて聴き直したビリー・ホリデイのレコード
「ダンスと音楽」と河野隆次君
世界を変えたいという望み
第二章 生家のこと
父の協力
父と母
関東大震災
横浜から神戸へ
福島の本店から独立
父が天職とした羽二重
第三章 神戸の少年時代
南京虫と格闘
三宮町一丁目に居を定める
三宮神社境内
上林温泉の夏
地獄谷の美人姉妹
還暦記念にはじめた囲碁
子供相手に碁は打つな
第四章 歌と映画と歌舞伎と寄席と
わが思い出のハヤリウタ
淡谷のり子さんのこと
若き日の徳川夢声の話術
ジャック・ベニーの見事な間
稀なる骨相
神戸三中時代
ヒゲの名校長近藤英也
受験で上京し映画と歌舞伎三昧
落語の名人たち
第五章 戦下の青春
東京駅で殺されるのはイヤ!
その日現場を歩いた二・二六事件
うきうき徴兵検査
満州国奉天の「捨て子院」に感動
二晩続けて現れた幽霊
母の発病
「これぞ我がタイプ!」
戦下の結婚
台場の高射砲将校時代
怖い死と怖くない死
東京大空襲
第六章 戦後の転変
終戦の日
生涯の感激
油井商店の再建
プラス三億円マイナス六億
円満に店仕舞いして東京へ
競馬場で暇つぶし
東銀座の事務所
民間テレビ開設のお手伝い
田中角栄の魅力
第七章 ジャズ評論家として
エプロン寄席
思い出に残る芸能人
続・思い出に残る芸能人
ジャズ・メッセンジャーズ初来日
主婦向け番組のホストを務める
ふたつの『四谷怪談』を見比べた
ポール・ブレイの記者会見
一九六〇年代の来日オーケストラ
僕のワープロ修行
油井正一アーカイヴにて、油井正一先生を思う(行方均)
アーカイヴが伝えるもの
評論家油井正一の原点
未完の遺作『もうひとつの昭和史』
油井正一年譜 (油井正太郎(資料提供))
編者あとがき(行方均編)