女たちの太平洋戦争 1
はじめに
〈I〉被害者そして加害者――国の内と外から――
枯れ野に並ぶ首を見た〈福岡県志免町〉(佐藤久子)
「非国民」と弁当を奪われ〈韓国・ソウル市〉(李英)
朝鮮人の女性を取り囲み非難〈福島県会津若松市〉(高田光子)
二つの国をさまよう心〈東京都府中市〉(匿名希望)
射殺命令、寸前で中止に〈フィリピン・ラグナ市〉(ノーマ・アルモロ)
日本軍に“寄付”した父――生きるために否応なしに〈シンガポール〉(クー・ユー・ヤップ)
兄は日本兵として死んだ――恨みは積もるばかり〈韓国・ソウル市〉(呉壬順)
民族衣装の洗濯姿――いま気付く偉大さ〈兵庫県河西市〉(大西和子)
「オモニ」と言えば罰金〈韓国慶尚南道馬山市〉(河福姫)
ニンニク見るたび浮かぶ複雑な思い〈神奈川県大和市〉(那須聡子)
ニンニクのにおいで――許さなかった席替え〈大阪府吹田市〉(堀みち)
隠れて見た「敵性映画」――中国・天津市で〈広島県福山市〉(佐藤道子)
町で殴打された米捕虜〈岡山県倉敷市〉(有田優貴子)
赤十字病院に爆弾――戦場では無力な国際条約〈山口県下関市〉(野際初恵)
青酸カリを持たされて〈静岡市大谷〉(川口光子)
終戦――現地の人に殴られた父〈大阪市中央区〉(吉田貞子)
引き上げの記録――息子あてにテープ〈長崎市〉(伊吹ヤエ)
●《訪ねて》…「息子を売れ」と言われながら(深坂勝彦記者)
「一貫目しか」――一歳の息子を抱きしめた父〈大阪府天王寺区〉(千葉孝子)
「引き揚げの記」に涙――憲法の重み痛感〈大阪府堺市〉(前田潤子)
四百人の命奪ったソ連機――口止めされた敵機飛来〈千葉県銚子市〉(小山永子)
●《訪ねて》…あの日々、忘れない――北朝鮮からの引き揚げを絵筆で再現(西垣戸勝記者)
娘を救ってくれた人〈大阪府堺市〉(日高一枝)
女性への乱暴が横行――帰国やっと三ヶ月だけ〈中国山西省聞喜県〉(山口政江)
戦友の慰霊進めたい〈滋賀県東浅井郡〉朝日弥栄
日本軍に夫を殺され米一俵とは〈インドネシア・ジャカルタ市〉(ニ・ラデン・ジュラエハ)
日本兵恐れ森に逃げた――役立った盗品のトランプ〈シンガポール〉(ウォン・ユット・イン)
次々と死んだ弟たち〈長崎県長与町〉(山口康子)
●《訪ねて》…台湾――悲しみの記憶(井上裕雅記者)
弱者を救えぬ恩給制度〈兵庫県姫路市〉(福永美知子)
〈北の島に募る思い〉
夜空に響き渡る「女工節」〈北海道標津町〉(篠田光子)
根室で待った国後が還る日〈北海道小樽市〉(梶野静子)
小船で脱出――水音に震え止まらず〈青森県上北町〉(二ツ森美枝子)
恐怖の中、芽生えた友情――ソ連の家族も戦火を逃れ…〈東京都大田区〉(三海サキ子)
〈II〉敵は日本人だった――戦時体制下の強圧――
父への便りに「輸送船沈んだ」――憲兵隊から呼び出しが…〈京都市左京区〉(宮本明子)
無断でトランク検査――「恐れ多くも…」と声高に〈大阪府大東市〉(加藤和子)
自由学園出身でスパイ容疑〈埼玉県浦和市〉(笠原徳)
「非国民」が、琴の音消す〈兵庫県姫路市〉(中野まつ子)
「師団長夫人」の見舞い――顔の覚えもありません〈大阪府高槻市〉(東野秀子)
万歳と叫びたくない――答えた友は泣いた〈大阪府西宮市〉(星野寿美)
キリスト教徒と名乗れなかった〈愛媛県北条市〉(岡崎幸江)
「モンペはけ」「大阪弁直せ」――疎開先でもう一つの戦い〈大阪市〉(清水蓉子)
渡された薬物――飲まずに済んで今の私〈鹿児島市〉(伊東節子)
戦火の東京――牛車で引っ越し〈東京都狛江市〉(関口昭子)
兄さん戦死せえへんの――繰り返し母に訴えた私〈奈良県生駒郡〉(岡本類子)
つらい胸の内、話せなかった〈大阪府羽曳野市〉(城野登久子)
「軍人の妻」にだまされる〈香川県大川郡〉(六車徳)
敗戦で一転、民主主義唱え…〈福島県二本松市〉(鈴木美枝子)
軍人に罵声――情けない日本人実感〈長崎県松浦郡〉(鏡福子)
教育のこわさつくづく〈和歌山県那賀郡〉(梅田矢す代)
「テレメンタリー」に涙――若い世代に語りつごう〈大阪府枚方市〉(角田玲子)
●《訪ねて》…ABC「おはよう6」の司会者・浅野陽子さん(柳博雄記者)
〈III〉地獄の劫火を見た――焼夷弾の雨の下で――
人形のようだった長男〈兵庫県明石市〉(西岡照子)
陸軍造兵廠、死体が山になった〈大阪市住之江区〉(角道与志子)
落ちる爆弾さけて泣く〈愛媛県松山市〉(芳野静恵)
母を失い家も全焼――泣き続けた〈大阪府島本町〉(妹尾千鶴子)
雨のような焼夷弾、炎で崩れる家…、助けを求め手伸ばすオッチャン〈滋賀県栗太郡〉(雨宮綾子)
進学の夢目前、爆死の兄〈香川県仲多度郡〉(澤以三子)
あぁ、生玉さんが燃えていく…〈大阪市天王寺区〉(山田伸子)
焼けた馬小屋、肉あさる人〈大阪市都島区〉(大津保子)
橋の下に避難、そこへ爆弾〈京都府田辺町〉(岩崎綾子)
●《訪ねて》…語り継ぐ大阪大空襲(西垣戸勝記者)
川に飛び込み失神――無数の遺体と浮いていた〈福島県郡山市〉(神尾比佐子)
言問橋の上に重なる「土人形」〈兵庫県芦屋市〉(角野美代子)
「授かった人生」生きる〈東京都江戸川区〉(増田アサノ)
焼夷弾の雨――反物十反持ち、走った〈福島市〉(八島ミネ子)
上野駅の疎開ラッシュ――見送るはずが、同行〈東京都狛江市〉(戸尾早木子)
あかり消し走った汽車〈滋賀県長浜市〉(吉田みを子)
●《訪ねて》…アニメ映画「うしろの正面だあれ」原作者・海老名香葉子さん(安東建記者)
ロマンチック気分も一瞬――忘れられぬ月夜の空襲警報〈鹿児島市〉(浜田浦子)
〈IV〉暗い青春――耐えるしかなかった日々――
恋も知らず牛を引いた〈奈良県生駒市〉(奥田タミ)
妹たちの食べ物のためいやなことに耐えた私〈大阪府高石市〉(橋本嘉津子)
疎開先でひたすら勤労奉仕――もっと勉強したかった〈和歌山県新宮市〉(金田恵子)
《訪ねて》…六十歳の高校卒業(伊藤周記者)
わんわん泣いた疎開児童〈広島県呉市〉(三宅美喜子)
何も疑わず日の丸を振った〈神奈川県鎌倉市〉(今野さなへ)
歴史〈京都府田辺町〉(早瀬秀)
●《訪ねて》…勤労動員の記録を自費出版(西垣戸勝記者)
過去や亡霊にしないで〈大阪府堺市〉(水本恵子)
《再び訪ねて》…広実さんと女学生ら対面(西垣戸勝記者)
「華族様」の辛い思い出〈東京都八王子市〉(小川喜久子)
男衆がいなくなる――十九歳で見合い、急ぎ結婚〈鹿児島市〉(中園光)
私の知る父は仏壇の写真だけ〈大阪府和泉市〉(柴田義子)
スルメなくチーズで出征――父は戦死、母の悔い深く〈滋賀県彦根市〉(三宅春代)
賞状に書かれた授与金――もらえず泣いたあの日〈和歌山市〉(山田美智子)
戦死公報届いたが、兄は復員した〈愛媛県松山市〉(杉野セツ子)
《訪ねて》…女学校時代二年間の日記(深坂勝彦記者)
泣いて兵士を見送った人々〈奈良市〉(中村剛子)
焼け跡と重なる嫁ぐ日の記憶〈大阪府豊中市〉(匿名希望)
孫たちの出征の日、来ないことを祈る〈大阪府八尾市〉(松本安)
細く長あい布の洗濯――それは褌〈大阪府藤井寺市〉(杉山有里子)
厳しい規律の集団疎開――空腹と不信ですさんだ心〈大阪市〉(田中えみ)
軍国教育を受けた兄――美校への夢捨て戦死〈栃木県足利市〉(早川とみ子)
出撃間近に迫り、別れの夜――兄の体をなでた父〈福岡県田川市〉(古川恵美子)
隊員の胸中知り複雑な気持ち〈岡山県倉敷市〉(橋口テル)
●《訪ねて》…特攻基地 鹿児島・知覧町で――隊員見送った乙女、今も祈り(安東建記者)
軍事教練に明け暮れ、そして…〈大阪府堺市〉(和田武子)
T先生の解説に涙――衝撃受けた軍国の少女〈群馬県甘楽郡〉(石井洋子)
●《訪ねて》…与謝野晶子「君死にたまふことなかれ」の周辺(柳博雄記者)
晶子に母校冷ややかだったか――反対した人、顕彰に活躍〈大阪市〉(大谷進)
一度は決めた集団自決――学徒勤労報国隊の8・15〈大阪市〉(佐々木和子)
あとがき
装画(早野朝子)
装幀(多田進)