戦争論理学
まえがき
序章 〈戦争犯罪〉への多元的アプローチ
ホロコースト
南京事件
原爆投下
01 無差別爆弾は悪だろうか?
定言三段論法
二重効果
02 「罪のない一般市民」とは誰だろう?
事実と価値
アナロジーの誤謬
03 原爆投下はただの無差別爆弾ではない?
関連要因と無関連要因
04 核兵器は通常兵器より悪いのか?
意図主義
05 軍事目標としての広島・長崎の妥当性は?
意図(目的)の特定
06 〈目標・日本〉は人種差別だから許せない?
ポストホックの誤謬
07 原爆投下は戦後戦略の一部だったのか?
係留ヒューリスティクス
08 ヨーロッパ優先戦略は正しかったのか?
行為と出来事の区別
条件付き判断
09 原爆投下は真珠湾攻撃の報復か?
自然主義の誤謬
逆ポストホックの誤謬
わら人形論法
10 優れた将軍たちが反対したではないか?
権威による論証
11 ポツダム宣言には何が仕掛けられていたか?
談話の規則
12 インディアナポリス撃沈事件は原爆投下を正当化する?
メンテナンス効果
13 日本にはまだ反撃策があった?
構成的ジレンマ
前件肯定
14 原爆のデモンストレーションをするべきだったのでは?
薫製ニシン
15 原爆投下は「最大多数の最大幸福」をもたらしたか?
功利主義
16 少なくとも長崎への原爆投下は正当化できまい?
限界効用逓減の法則
相乗効果
マスキング効果
17 結局はソ連への威嚇だったわけでは?
ポストホックの誤謬
18 アメリカの国益追求って敵国日本にとっては……?
ノンゼロサムゲーム
19 一億玉砕を撤回させる決め手は?
パラダイム変換
20 天佑が戦争モードをリセットしてくれた?
コントラスト効果
21 むしろ不必要なのは広島原爆のほうだった?
必要条件と十分条件
22 超自然頼み、そもそも無条件降伏要求のせいでは?
マッチポンプ
循環論法
23 なぜ「国家」に無条件降伏を要求したのか?
分割の誤謬
24 今さら無条件降伏要求を責めても仕方ないだろう?
演繹定理
25 日本国民の自由意思なら結構ではないか?
寛容の原則
26 「国体護持」の論理とは何なのか?
「認める」という関係
27 面子と面子の衝突は腹芸で妥協?
暗示的意味
28 単独不講和を協定しておいて降伏などできない?
心理的拘束と論理的拘束
多重決定
選択効果
29 ドイツ降伏は絶好のチャンスだったか?
大東亜共栄圏
ダブルスタンダード
天災論
30 ポツダム宣言とハルノートはそっくりだが……?
構造的同型性
31 原爆が戦争を引き延ばしたという理屈は成立するか?
原因と結果を取り違える誤り
32 天皇制を認める〈試み〉くらいしてもよかったのでは?
換喩的戦略
33 「議会への説明」というプレッシャーは何なのか?
個人的責任
34 推測上の利益と現実の犠牲を天秤にかけると?
完璧主義の誤謬
35 20億ドルかけたからには何が何でも成果出せ?
コンコルドの誤謬
誤った前提への依存
虚構の同調圧力
36 過去に囚われるのは当然といえは当然?
倫理的整合性
二つのコンコルドの誤謬
37 連合国も非道の限りを尽くしているのでは?
「お互い様」の論理:肯定バージョン
38 不公平な裁きのもとで「正義」とは何様なのか?
勝者の裁き
意味の全体論
カテゴリーミステイク
永久文
39 天皇を免責したアメリカは正しかったのか?
天皇機関説
40 天皇の戦争責任と原爆投下の正当性は関係があるのか?
自己規定のバラドクス
41 皇室との和平交渉の余地はあっただろうか?
過剰な補償
42 イメージ戦略からも原爆投下は失策だった?
不当な一般化
選択効果
43 「君側の奸」が聖断を歪めている?
意図の再定義
アドホックな仮説
論点先取の誤謬
44 日本本土進攻で「犠牲者100万人」はありえない?
動機によるバイアス
意図主義
45 日ソ中立条約破棄はいくらなんでも酷すぎる?
倫理的正当性
46 ソ連参戦でいったい誰が得をしたのか?
功利的必要性
47 日本政府が満州に移動したかもしれない?
意図主義
48 原爆投下の政治経済的影響って結局?
理論的認識と実践的配慮
49 原爆肯定論者は、核兵器を容認するつもりなのか?
論理的意味と因果的影響
不当な類推
50 不用意な議論が核兵器容認に利用されることは確かでは?
因果關係と相関関係
誤った前提への依存
51 肯定論の影響が心配だからとりあえず否定すればいいのか?
忖度のパラドクス
52 原爆肯定論の損得勘定、よくよく考えれば?
期待効用
53 原爆肯定の潜在的悪影響はやはり侮れない?
倫理的実在論と反実在論
原則と特殊判断
54 被爆者のことを考えても原爆投下を肯定できるのか?
現実バイアス
慈悲深い殺人のバラドクス
背理法
55 被爆者のことをもっと考えると何が見えてくるか?
ステレオタイプ化
特定者バイアス
56 被爆者のことをさらにもっと考えると?
感情に訴える議論
原因と理由
空なる理由
57 実感を重んずると論理はどうなる?
美的情報と論理構造
58 原爆開発は確かに科学的快挙だったが……?
努力の美徳性
規則功利主義
59 戦災者の中で被爆者は別格でありうるか?
二重効果
未必の故意
緊急避難
60 日本は結局本当に無条件降伏したのか?
ファインチューニング
意味論と語用論
量の格率
61 原爆投下を回避するには御都合主義的ヤラセが必要だった?
後知恵バイアス
ド・モルガンの法則
愚者のシナリオ
62 アメリカ人ですら今や原爆投下の非を認めつつあるのだが?
修正主義
無関連要因重視の誤り
付録1 否定論・肯定論それぞれの主な論拠(本書の大まかな流れ)
付録2 カイロ宣言
付録3 ポツダム宣言
あとがき
事項名・人名索引
論理用語・学術用語索引