娼婦学ノート
第一章 敗戦直後の娼婦小説
逞しく生きた少女娼婦の成長秘話…『肉体の門』(田村泰次郎)
肉体の試練を再生のステップにする淑女…『雪のイブ』(石川淳)
再会、そして……渋谷・恋文横丁の残酷…『恋文』(丹羽文雄)
母が娼婦であることを知った少年の襖悩…『母子像』(久生十蘭)
娼婦との恋はいつの世でも男の煉獄…『ミミのこと』(田中小実昌)
女を転落させてゆく”過去の汚点”…『ゼロの焦点』(松本清張)
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第二章 売春防止法施行前後の娼婦の物語
聖女のごとき性女が背負った十字架とは…『わたしが・棄てた・女』(遠藤周作)
運命を潔く引受けた女の光と影…『五番町夕霧楼』(水上勉)
娼婦にとって操を守るということは?…『騨雨』(吉行淳之介)
魂は売らない、インテリ娼婦のプライド…『青春の門 自立篇』(五木寛之)
父の温もり恋しさに、夜毎股間を開く女…『マッチ売りの少女』(野坂昭如)
娼婦のアソコは天国門か地獄門か!?…『飛田残月』(黒岩重吾)
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第三章 女性が書いた娼婦小説
戦死した夫の骨壷にカネを貯める街娼…『骨』(林芙美子)
「オンリー」の時代は今また繰り返される…『オンリー達』(広池和子)
闇を突き抜けた娼婦達の明るい底力…『わが妹・鳥子』(堤玲子)
瀬戸際なればこそ漲る女のしたたか…『洲崎パラダイス』(芝木好子)
魂を模索する女の苛烈すぎる人生…『黄色い娼婦』(森万紀子)
貢ぐ女の見果てぬ夢はいつまで続く…『ミチルとチルチル』(佐藤愛子)
心と身体をバラバラにしたいと願う性女…『ボディ・レンタル』(佐藤亜有子)
焼死したソープ嬢の心の旅をたどれば…『イノセント』(中村うさぎ)
女の目が追うソープ嬢の心と肉体の闘争…『石鹸オペラ』(清野かほり)
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第四章 ソープランドを舞台にした娼婦の物語
ソープに沈んだ中学校女教師の受難…『嫌われ松子の一生』(山田宗樹)
突如出現した竜宮城に狂い咲く女の情念…『幻の湖』(橋本忍)
推理小説に初めて登場したトルコ嬢探偵…『仮面をぬぐシルビア』(都筑道夫)
作家と泡姫、ひと目惚れの深間…『片翼だけの天使』(生島治郎)
高校教師と真性Mソープ嬢の過酷な性…『ハリガネムシ』(吉村萬壱)
月に棲む女たちの葛藤を描いた秀作…『皆月』(花村萬月)
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第五章 現代日本の娼婦小説
「娼婦」と書いて「じごく」と読みます。…『赤目四十八瀧心中未遂』(車谷長吉)
悪徳の海で溺れかけている女は美しい…『トパーズ』(村上龍)
なんでもありの世紀末風俗のぞきからくり…『夢の原色』(森村誠一)
わけありヘルス嬢との恋が実らない理由…『一輪』(佐伯一麦)
癒しを切り売りする娼婦の深い闇…『なぎさの媚薬』(重松清)
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第六章 日本人の娼婦観を変えた娼婦の物語
競馬予想のコラムに登場した桃ちゃんの素顔…『競馬場で逢おう』(寺山修司)
愛人志願の素人女性を激増させた純文学…『夕暮まで』(吉行淳之介)
性女に魅せられた官能小説家の眼差し…『私版愛人バンクI』(川上宗薫)
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「娼婦学ノート」が出来るまで
相関表 戦後性風俗の歩みと娼婦小説