証言―日本洋楽 (クラシック) レコード史 戦前編
はじめに
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第一章 クラシック音楽の黎明期
明治・大正の洋楽レコード
初めてのレコード論争
機械吹き込みのレパートリー
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第二章 洋楽レコードの国産化-クラシック音楽の大衆化
洋楽レコードの国産化その時代と雰囲気
ビクター、コロムビア、ポリドール、各レーベルの特色
パーロフォンとオデオンの国産化と、その特色
電気吹き込み初期の巨匠と、若き日の巨匠たち
昭和初期のレコード店とレコード・ファン気質
ラジオ放送とレコード
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第三章 昭和初期に国内発売された主な洋楽レコード
昭和二年から昭和五年に発売された日本ポリドールの主なレコードとアーティスト
交響・管弦楽曲i伯林の二大楽団と指揮者たち
室内楽、器楽曲一枚看板だったケンプ
声楽曲スレザーク、シュルスヌスらのドイツ・リートとブルーノ・キッテル合唱団の《ミサ・ソレムニス》
昭和三年から昭和五年に発売された日本コロムビアの主なレコードとアーティスト
交響・管弦楽曲-ワインガルトナーをはじめとする多彩な指揮者とオーケストラ
盛んだった同時代の音楽の録音
充実していた室内楽、少々手薄だった器楽曲
他社に先駆けたオペラ全曲盤と、大歌手クララ・バット
昭和三年から昭和五年に発売された日本ビクターの主なレコードとアーティスト
交響・管弦楽曲-絶大な人気を誇っていたストコフスキー
器楽・室内楽曲-カザルス・トリオの三人を中心にした豪華ソリストたち
アリアなどポピュラーな小品が中心だった声楽
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第四章 レコード人気質とレコード雑誌
『ディスク』主幹、青木謙幸氏にきく
船の中で聴いた《第五》でクラシック音楽に開眼
グラモフィル社の設立と『ディスク』発刊
音楽とレコードを愛し、本当に自分が書きたいことを書いた同人たち
外盤紹介をめぐるレコード会社との摩擦
紙不足のなかで、これが最後と思ってつくった豪華本『珍品レコード』
レコード三誌の統合と慰問レコード
『レコード音楽』とその他の音楽雑誌
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第五章 国産洋楽レコードの成長期、または黄金時代前期
昭和ひと桁後半の日本のレコード界
順調に成長を続けた日本の洋楽レコード界
ラジオの普及と蓄音機の低価格化
大衆盤としての黒盤と中古レコード店
協会レコードと音楽史レコード
ビクターの長時間レコードと日本コロムビアのギャランティ・システム
EMIと英デッカ
レコードの検閲
協会レコードの成功
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第六章 昭和ひと桁後半に国内発売された主なレコード
昭和六年から昭和十年に発売された日本ビクターの主なレコードとアーティスト
ストコフスキーを中心にした多彩な指揮者陣とレパートリー
比較的渋い室内楽曲と名手のそろった器楽曲
昭和六年から昭和十年に発売された日本コロムビアの主なレコードとアーティスト
スター不足の指揮者陣を、ヴァラエティに富んだレパートリーでカヴァーした交響・管弦楽曲
カペーとレナー四重奏団を中心に人気のあった室内楽とスター不足の器楽
通人たちを大いに喜ばせたフランス歌曲
昭和六年から昭和十年に発売された日本ポリドールの主なレコードとアーティスト
多彩なレパートリーを持ちながらも、苦戦した交響・管弦楽曲
意外に低調だった室内楽と、やはりケンプが担っていた器楽
スレザーク、シュルスヌスらを擁して充実していた歌曲とヒットした縮小オペラ
日本パーロフォンと日本オデオンの主なレコード
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第七章 戦前の日本における洋楽吹き込みと蓄音機
日本人電気録音技師第一号の楠本哲秀氏
昭和初期の録音事情-録音のために豆腐を買い占めたことなど
シャリアピンやティボーの日本吹き込み
音の調整や録音機材について
音楽とオーディオ〈蓄音機〉の出会い
音が格段に大きくなった電気吹き込み法
各社の録音法と盤質
各社の音の特徴と盤質
SP時代の優秀録音-聴き手の想像力をかきたてるSPの音
良い音、良い蓄音機を求めて
竹針か鋼鉄針か
サウンドボックスとホーン
回転数とSPレコードの周波数特性など
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第八章 戦時統制下における日本洋楽レコードの黄金時代
昭和十年代前半の日本の洋楽レコード界
五万セットを売ったトスカニー二指揮のベートーヴェンの《第五》
検閲・統制の強化と洋楽レコード
原料のシェラックの不足と盤質の低下
キングレコードによるテレフンケンの発売
レパートリーの中心となった交響・管弦楽曲
レコード界をいっそう活気づけた多彩な来日演奏家
洋楽レコードの大衆化を促進した予約頒布レコード
大ヒットしたビクター「洋楽愛好家協会」
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第九章 昭和十年代前半に国内発売された主なレコード
昭和十一年から昭和十五年に発売された日本ビクターの主なレコードとアーティスト
トスカニー二の本格的録音開始で、ますます充実した交響・管弦楽曲
べーム、セルなど、次々に登場したステレオ時代の巨匠たち
ブッシュ四重奏団やコルトー、カザルスら名演奏家の活罹で充実した室内楽曲と器楽曲
モーツァルト歌劇協会やシューベルト歌曲協会が画期的だったビクターのオペラと声楽曲
昭和十一年から昭和十五年に発売された日本コロムビアの主なレコードとアーティスト
フルトヴェングラーとの契約やワルター&ウィーン・フィルの録音などによって、格段に華やかになった交響・管弦楽曲
レナー四重奏団を中心にした室内楽と、ギーゼキングら若手の活躍が目立った器楽
この時期もフランスの女声歌手が中心だったコロムビアの声楽
昭和十一年から昭和十五年に発売された日本ポリドールの主なレコードとアーティスト
英デッカの発売で何とか面目を保った交響・管弦楽曲
特色が薄れた室内楽曲とケンプひとりが支えた器楽曲
人気の高かったシュルスヌスの歌曲と話題を呼んだバイロイト・ワーグナー祭の録音
戦前の日本洋楽レコード界の第四勢力となったテレフンケンの主なレコードとアーティスト
講談社をバックに華やかに登場したテレフンケン
ベルリン・フィル、アムステルダム・コンセルトヘボウという二大管弦楽団を擁して気を吐いた交響・管弦楽曲
交響・管弦楽曲に比べると、弱体だったその他のジャンル
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第十章 レコードをめぐる人たち-レコード会社、レコード店とレコード・ファン気質、音楽喫茶
つわものぞろいだった戦前のレコード会社の洋楽担当者やセールスマンたち
時代の先端を行く大会社だった戦前のレコード会社
少数精鋭で何でもやった当時の洋楽担当者たち
日本コロムビアの発足とともに大きく変わったレコードの販売形態
つわものぞろいだった戦前のレコード・セールスマン
戦前のレコード店とレコード・ファン気質
マニア向けのレコード店が集まっていた戦前の神田神保町界隈
現在以上に強かったマニアの輸入盤指向
神経を使ったSPレコードの保管と手入れ
音楽ファンを育て、その溜まり場であり、情報交換の場でもあった戦前の音楽喫茶
音楽好きが高じて始めた名曲喫茶
やはり学生街に多かった名曲喫茶
それぞれ特徴を持っていた戦前の名曲喫茶
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第十一章 戦時統制下の受難時代に耐えた日本の洋楽レコード界
原材料不足と物品税
統制機関としての日本蓄音機レコード文化協会と日本音盤配給会社の設立
英米音楽の禁止と戦意高揚のための厚生音楽
工場の軍需工場化と戦災による生産中止
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第十二章 昭和十六年から昭和十八年に国内発売された主なレコード
昭和十年代後半に発売された日本ビクターの主なレコードとアーティスト
巨匠と若手がバラスン良く噛み合って、戦時体制下でもなかなか魅力的だったビクターのレパートリー
数は減ったが、ビクターならではの名手たちの録音がそろっていた室内楽曲と器楽曲
原盤不足の影響もあって盛んだった日本録音とアジアの音楽の紹介
昭和十六年から昭和十八年に発売された日本コロムビアの主なレコードとアーティスト
華やかではないが、独自の路線を貫いて、充実していたコロムビア
ワルターの活罹とロジンスキー、ミトロプーロスら若手指揮者の登場
ギーゼキングやカサドシュ、シゲティやミルシテインの活躍で、この時期もなかなか多彩だった室内楽曲・器楽曲
昭和十六年から昭和十八年に発売された日本ポリドールの主なレコードとアーティスト
フルトヴェングラーらの再発売によって、何とか発売点数をそろえていた交響・管弦楽曲
E・H=シュナイダーの日本録音やシュルスヌスらの再発売で何とか格好をつけた室内楽・器楽曲と声楽曲
昭和十六年から昭和十八年に発売されたテレフンケンの主なレコードとアーティスト
発売点数は少ないが、メンゲルベルクやシュミット・イッセルシュテットなどを中心に健闘した交響・管弦楽曲
フランスのカルヴェ四重奏団とクーレンカンプによって何とか形をつけていた室内楽・器楽曲
戦前の洋楽レコード界を振り返って
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あとがき
索引