新聞・資本と経営の昭和史
はじめに
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1 新聞はいかにして一大敵国となったか
「貧乏物語」の衝撃
毎日の原敬、朝日の漱石
販売拡張でイベント合戦
東京進出を図った大阪勢
「一大敵国」となった大阪朝日
仕組まれた弾圧、白虹事件
屈服した朝日新聞
封印されていた政府援助
挫折した大株主の権限制限
白虹事件の呪縛
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2 「筆政」緒方の誕生
中野正剛の引きで、朝日入社
「大正」元号をスクープ
白虹事件で論説委員に抜擢
鳥居論説にきびしい評価
失意の英国留学
関東大震災により全国制覇
求められた経営センス
自由な雰囲気をつくる
綱紀粛正の裏に待遇改善あり
「編集の緒方」と「営業の石井」
緒方、右翼に襲われる
皇族記事で大誤植
襲撃に備え、ピストル、日本刀を配備
対右翼の防波堤・ボディガード
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3 軍部に抗することはできたか
普選、軍縮の先頭に立った高原筆政
興隆期を迎えていた新聞販売
東朝販売の主力は軍隊式の拡張団
張作霖事件のスクープ写真
軍縮断行に強い反発
軍部クーデターのうごめき
軍部・右翼への情報収集
東西朝日あげて軍縮を鼓吹
運命の満州事変勃発
激しい号外合戦
黒竜会首領内田良平の訪問
高原論説の豹変
「船乗りには『潮待ち』という言葉がある」
先行していた東京朝日の変節
奉天特派員は関東軍参謀の同志だった
権力と新聞との関係の分岐点
最後まで抵抗した大阪整理部
緒方の大朝批判の是非
戦争は新聞にとって神風だった
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4 二・二六事件の仁王立ち
異変予期し、三〇万円を準備
幻のスクープ「岡田首相生存」
さすがに緒方も叱責
大阪から出てきた新聞商品論
「白蓮事件報道」の評価
東西社説を一本化、緒方主筆体制に
社主家は天皇、主筆は首相
酸素がだんだん乏しくなってきた
インサイダー事件で東朝経済部を粛正
後退した「朝日の自由主義的傾向」
強化された官僚的統制
新聞の黄金時代は過ぎた
国民を熱狂させた「神風」欧州大飛行
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5 日米開戦への道
「新聞報国」と「朝日精神」
公報より早かった地方版の戦死者情報
取り込まれた新聞社幹部
統制のさきがけになった「同盟」
関東軍を取り込み、国策通信社設立へ
目をつけられたラジオの資金力
同盟・中央紙に猛反発した地方紙
同盟支援の緒方に美土路反発
緒方は米内が好きだった
「君は社長の僕に相談したことがない」
近衛新体制支持で社内に不協和音
始まった新聞統制
笠が知恵袋だった「資本と経営の分離論」
密かに和平工作に乗りだす
つぶれた東久邇宮首班
新聞は意気地がないか
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6 ゾルゲ事件と中野正剛の憤死
緒方にかわいがられた尾崎
近衛内閣崩壊と連動していたゾルゲ事件摘発
日米開戦をスクープした毎日
事件の不安で浮き足立っていた?
捜査はついに朝日政経部を直撃
「率先垂範」の東条を皮肉る
得意の演説を封じられた中野正剛
粛殺の気せまる「戦時宰相論」
元旦の朝、「朝日新聞は発禁だ」
中野逮捕めぐる官邸大広問の大会議
拘留状却下に歓声あげた検事たち
帰宅の夜、中野が自刃
中野が東条に勝ったのだ
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7 「反緒方」のクーデター
朝日で出世するには「諂い」が大事
緒方批判の火の手があがる
「大阪方」と「軟派」が手を組む
村山家の株主権限を制限
社団法人新聞社の誕生
住友に勧められた経営改革
共販実施で販売競争終わる
盟友美土路の離反
社が迷惑するじゃないか
社長の大権に屈服
「政治部・論説偏重を打倒する」
俗物どもに嫌気がさす
竹槍では間に合わぬ
廃業に追い込まれた「中央公論」「改造」
執拗に入閣を勧めた村山社長
ついに朝日新聞社を退社す
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8 潰された和平工作
統制強化と銃後の生活
「大詔漢発、戦うのみ」
情報戦の最前線に
戦時体制で確立した記者クラブ
情報なき情報局総裁
大誤報だった「レイテの大勝」
和平工作に乗りだす
革命記念日に処刑された尾崎・ゾルゲ
硫黄島に涙の激励放送
再浮上した膠斌ルート
小磯を説得した東久邇宮
工作の中核は朝日関係者
毒がまわっていて駄目だった
「庸人国を亡ぼす」
執拗に真相を探った緒方
鈴木文四郎のバッゲエ作
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9 統制に屈服した新聞
沖縄敗北で「一億総特攻」
ついに地方から撤退
新聞統制で楽になった新聞経営
荒んだ空気に編集局内でデモ行進
再確認された黙殺
社内で語られ始めた戦争責任論
息子に語った終戦の動き
下村の進言で「玉音放送」
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10 新聞にとって「戦争」は終わっていない
新聞統制の残したもの
戦後に継続された戦時体制
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註
参考文献
資料1 緒方竹虎を中心とした新聞近現代史
資料2 全国三大紙の新聞発行部数の伸び
索引