可能性としての「戦後」
はじめに
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第一章 廃墟から―自由について
虐殺爆撃
空襲警報が遅れた
二億坪が焼けて…
焼跡闇市こそわが故郷
すべてが灰と化したとき、思わぬ力が湧いてくる
浮浪児・パンパンメシア
「自由」を選択する決意
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第二章 戦後思想のなかの「軍隊」―「軍」はいかに描かれたか
坊主刈りの体験から
社会そのものが軍隊になる
「一銭五厘」の伝説
私的制裁の恐怖
極光のかげに
星の数よりめんこの数
言い訳は許されない
軍人の最高無比の教義
大西・野間論争
良い兵士とは…
東堂太郎の「闘争」
寝るときだけが自由
気ばらしとしてのいじめ
指導のために殴る
血が流れるという事は生きている証拠や
わたしたちは兵隊だ
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第三章 『自由学校』の男と女―獅子文六の戦後
芸道一筋の大佐
「出ていけ!」
茫然自失の男たち
女性教祖が輩出
世論調査は語る
ベストセラーになった秘密
「軍神」が力タルシスをもたらす
時代風俗の語り部
「ぶざま」であれ
臆病者の天国
「一人で映画を見る自由」はあるか
主婦が家計を牛耳る
強大な母、影の薄い父
勇ましい「男」はいらない
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第四章 「ムラ」の政治―杉浦明平のルポルタージュ
村八分
地主は蜘蛛だ
郷里を動かず
騒動勃発
ボスのやり口が明るみに
『台風十三号始末記』
一文でも多く補助金を取れ
嘘がばれても予算は通る
癒着の原因
農村という密室
日本農民は矛盾する性格を持つ
政治から身をひく
渥美町の変貌
発電所が建って…
夜逃げ町長
『住民』という存在
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第五章 民衆的理性のために―花森安治と『暮らしの手帖』
イギリス製の石油ストーブ
宝塚体験
職人に徹する
なぜ広告を入れないのか
「暮しの手帖」創刊
「くずし」の美学
基本を大事にする
焦るな、体験に即して考えよ
名物、商品テスト
スカートをはく編集長
「啓蒙主義」の遺産
紋切り型の『一戈五厘の旗』
まるで人造人間だ
強制された「美」
職人の「逸脱」
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第六章 子どもに自由を―松田道雄の仕事
町衆の系譜
マルクス主義と聖書
「転向しない転向者」
『赤ん坊の科学』
スポック博士の育児書
確固たる姿勢
結核はみんなで治そう
日本でいちばん弱い者
若い母親は不安
時代風潮に抗して
子育ての六〇年代―伝統からの断絶
自慰をする幼児
人間に空気、子どもに自由空間
「戦後」の初心
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第七章 戦争は終わった―私たちは何処から出発してきたのか
どの戦争ですか
「現場」の思想
一〇坪の工場から
山びこ学校
すべてが具体的
社会の非軍事化
『三等重役』と『江分利満氏の優雅な生活』
自分は何者であるのか
人間は人間に服従しない
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註
旧版あとがき
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増補
戦後史のなかの黒澤映画
戦後少年文化のなかの乱歩
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平凡社ライブラリー版のあとがき
索引