反空爆の思想
- サブタイトル
- NHKブックス;1065
- 編著者名
- 吉田 敏浩 著者
- 出版者
- 日本放送出版協会
- 出版年月
- 2006年(平成18年)8月
- 大きさ(縦×横)cm
- 19×
- ページ
- 308p
- ISBN
- 4140910658
- NDC(分類)
- 319
- 請求記号
- 319/Y86
- 保管場所
- 閉架一般
- 内容注記
- 主要参考文献:p295‐305
- 昭和館デジタルアーカイブ
第一章 空爆による死と痛みをめぐって
我が子の血で染まった父親のシャツ/流血という戦争の本質/世界を切り裂く異形の物――戦慄の空襲体験/地上と上空の絶対的隔たり/血の衝撃がかき立てる恐れ/アリ・サクバン氏の胸を貫いた痛みとは/空爆加害者と空爆被害者の間に横たわる圧倒的な距離・隔たり/
民間人被害者の惨状を知らされないアメリカ国民/アフガニスタンとイラクの戦争被害者への間接的加害者である日本人/「厚木基地の滑走路はイラクに通じている」/イラク空爆被害者の実態を知る/アフガニスタンでのアメリカ軍「誤爆」の真相/
「ピンポイント爆撃」の実態とは/「精密誘導爆撃」は実質的には無差別爆撃/我が子の血が刻みつけた痛みで世界の被害者とつながる/9・11テロ遺族団体「ピースフル・トゥモローズ」の、痛みへ開かれた感受性/「やむをえない犠牲」論がうながす思考停止
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第二章 空爆の歴史、その傷を通して見つめる
ある版画に刻まれた空爆の惨禍/気球による初の空爆/第一次世界大戦に投入された飛行船/科学技術の粋・飛行機の登場/一九一一年、史上初の飛行機からの空爆/ヨーロッパ列強による植民地での爆撃と民間人の殺傷/第一次世界大戦での爆撃機の大型化――死傷者の激増/
都市爆撃の始まり――国家総力戦における戦略爆撃思想の誕生/植民地制圧に駆使された「エア・パワー」/大英帝国維持による財政難が生んだ「インペリアル・ポリーシング」/列強が展開したゲリラ・民間人の掃討作戦/
自軍の死傷者を最小限にし、相手に多大な流血と恐怖をもたらす「弾圧爆撃」/キャパがとらえたスペイン内戦下で空爆にさらされる人びと/「ゲルニカ」に込められた空爆被害の本質/第二次世界大戦時の空爆――敵国民の士気を挫く「地域爆撃」/
イギリス・ドイツの大規模爆撃の応酬/アメリカ軍の無差別焼夷弾爆撃――東京大空襲/死の炎に呑み込まれる人びと/空爆の極点としての原爆投下/被爆者の問いかける眼/「内部爆撃」にさらされ続けた被爆者と被曝者
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第三章 日本も空爆の加害者だった時代
被爆した朝鮮人労働者/在韓被曝者の苛酷なその後/「植民地支配による被爆」を認めない日本政府/様々な国の被爆者・死者/日本軍の航空黎明期/日本軍による初めての空爆――青島攻撃/台湾統治と飛行機による威圧/
「若者ノ死傷者ヲ出シ」――罪悪感の欠落/警察航空班の「蕃地威嚇飛行」/列強に共通する植民地支配の欺瞞に満ちた正当化/「霧社事件」の弾圧にも使われた空爆/
シベリア出兵に投入された航空部隊/朝鮮独立武装勢力に対する間島出兵と飛行機/満州事変・上海事変での都市無差別爆撃/「けふも南京大空爆」――日中戦争で拡大する都市爆撃/「ある程度の非戰鬪員の死傷は免れ難い」/大量殺戮と社会基盤崩壊を狙った重慶爆撃/
欧米メディアが報じた空爆下の中国の惨状/爆撃機の搭乗員は何を感じていたか/「航空日本展覧会」に詰めかけた人びとと軍用機献納運動/日本軍の重慶爆撃が引き金となったアメリカ軍の日本焦土作戦
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第四章 航空宇宙戦力と破壊と殺傷
米ソ冷戦と核戦略のエスカレーション/朝鮮戦争でのアメリカ軍戦略爆撃/マッカーサー・金日成と空爆被害者/増大する爆弾投下量/大陸間弾道弾(ICBM)の登場――とめどなき米ソの軍拡競争/第二次世界大戦後の英仏の「弾圧爆撃」強化/
第三世界へも浸透した「エア・パワー」/「北爆」――ベトナム戦争/「フリー・ファイア・ゾーン」――果てしなき無差別爆撃/ベトナムはアメリカ軍のあらゆる爆弾の実験場となった/戦後も続いた枯れ葉剤による「内部空襲」/アメリカの精密誘導爆弾開発の論理/
湾岸戦争――メディア操作の裏に隠された民間人被害/相次いで投入された新型爆弾/遺伝子を攻撃する劣化ウラン弾/軍拡は宇宙へ――アメリカによる「地球規模の航空宇宙戦力」の出現/イラク戦争の伏線としての「飛行禁止区域設定」/
NATO軍のユーゴ空爆――「人道的介入」といえるのか/「宇宙の軍事化」から「宇宙の兵器化」へ
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第五章 「やむをえない犠牲」論を解体する
空爆の歴史の底流にあるもの/「戦争を早期に終結させる空爆は人道的である」――空爆正当化論の倒錯/第一次世界大戦地上戦における膨大な兵士の死傷者の問題/自国の兵士の死傷を減らすため――空爆の費用対効果/敵国国民の命を「消耗品」と見なす/
「テロから国民を守るため」――アメリカのさらなる空爆正当化論/「付随的被害」という名の計算された殺人/「勝利を確実にし、われわれの兵士を護る」――ブッシュ政権の本音/世界を戦慄させるアメリカの全能感と独善的正義感/
「開放と自由」をもたらす空爆はありえない/「ネセサリー・コスト」の真意とは/「やむをえない犠牲」=「強いられた犠牲」/ハーグ平和会議の「期限つき」空爆禁止宣言/抜け穴だらけの「ハーグ空戦規則案」/植民地支配する側の差別意識と無関心/
裁かれなかった無差別爆撃/無差別爆撃を再度禁止したジュネーブ諸条約第一追加議定書/国際人道法の解釈は空爆する側に握られている
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第六章 他者の痛みをどのように考えるか
家族の時間を断ち切るもの/温かい一人ひとりの体液/空爆被害者の痛みに思いを向かわせるものは何か/ビルマの山里と日本軍の不発爆弾――歴史に埋め込まれたもの/眼を背けること――感情と思考の麻痺/血の記憶の連鎖/
死んだ政府軍兵士の問いかけに震える/「あなたは…」――三人称から二人称の世界観へ
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主要参考文献
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あとがき
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