猿飛佐助薩摩落

１
奇態奇態
其方に大役を申し付ける
己れ今に見よ
ヤョ皆の者喜べ
方々油断有るな
斯うなれば絶体絶命
２
雲に乗つて
何うも怪しからん奴だ
ヤア大変大変
此奴は大分強そうな奴だな
あの此所な横着者奴ッ
ヤヽッこりや何うじや
３
喧嘩好
此奴生意気な事を吐す奴だ
ヘヽンどんなもんだい
貴様には叶はん
恐ろしい大きい武士が来た
喧嘩好きの荒川熊蔵
４
悪事露現
ヤア人違いをするな
ジタバタ騒ぐな
こりや酒だ酒だ
ヒヽ人を馬鹿にして居やァがる
アハヽヽ馬鹿な奴だ
５
轟く銃声
物騒な目付きをするな
生命が惜しいか
酒が言はする悪口雑言
イヨイヨ変だぞ
現はれ出でたる二人の曲者
６
男の生首
チェー口惜しい
ヤィ太い事を言ふな
オヽ誰れかと思へば猿飛か
さては計略にかゝつたか
某は天下の浪人
７
御注進
エーイ欲張つた奴だ
又金儲けに有りついた
ヤヽッ大変大変人相を見たら何も彼も分る
御注進御注進
８
ハテナ
ウーム何者だッ
金さへ貰へば用事はない
貴様の暴れ好きには困る
関東よりの間者に相違ない
面白い話が有る
９
女装の間者
佐助耳をかせ
酒は女の酌に限る
イヨイヨ怪しい奴だ
誰れじや誰れじや
ヒソヒソ話し合ふて居る
１０
返り忠
マゴマゴすると捻り潰すぞ
アワヤ切腹
ハテナ一向に分らん
ヤイ待て下郎
有金残らず渡して仕舞へ
１１
愛妾芳野
春川三右衛門の娘芳野秀頼公の妾に上る
誠に有難い仕合わせ
芳野は心のやさしい女
飛竜太郎左衛門破れ障子之助の悪計
１２
座敷牢
ヤッ曲者ッ
唖でお負けにつんぼ
コリャ嘘を吐け
チョイと暴れ口が出来た
この腕が夜鳴きをして困る
１３
アヽ残念
ウーム不思議不思議
門を叩き破つで乗り込もう
アイタ…此の野郎
人を呪はば穴二つ
アヽ不埒千万な奴だ
１４
大評定
甚だ以つて怪しからん
卑怯な事を言ふな
天下恐るべきは大御所家康有るのみ
貴様には負けんぞ
チト恥を知れ
１５
気を注けろ
何を吐す此の野郎ッ
ヤイ猿飛これへ出ろッ
イヤこれは驚ろいた
これは以外の対面だ
オイ爺泣事を言ふな
１６
オヤオヤ
一番奴を驚かしてやろう
目を剥いて唸つて居る
ヤア捨子だ捨子だ
エイ意久地のない奴等めッ
イデヤ目に物見せてくれん
１７
強請
尻に帆かけてハイ左様なら
ウーム口惜しい
エーイアヽ酔つた酔つた
身共は天下無禄の浪人
ヤア面白い面白い
１８
奉賀帳
チト御無心がいたしたい
オヤオヤこれは大変な事になつた
汝ッ不届き者ッ
イヨーこれは有難い
マンマと五百両ものにして
１９
鞘当
サア占めた
貴様等は気の細い奴だ
天下のお尋ね者
キリキリ立帰れッ
喧嘩は三度の飯よりも好き
２０
降参しろ
エイと喚いて斬り込む太刀風
此奴なかなか強い奴だ
耳を引つぱるとは怪しからん
ヤイ降参しろ
サア祝ひの酒を呑もう