清新な光景の軌跡
第1章 しっかり歩け
<五分間>の負債-村上竜『五分後の世界』と火野葦平『革命前後』
解放軍と配給された<自由>-野坂参三・徳田球一・河上徹太郎
しっかり歩け、元気出して歩け-梅崎春生「桜島」「幻花」
楕円幻想-花田清輝『復興期の精神』
死人ガ多スギル-中野秀人の詩と小説
屈辱の苦杯の味を-「文化展望」創刊と大西巨人『神聖喜劇』
大地が燃える-「午前」創刊と北川晃二・風木雲太郎
美しかった日に-真鍋呉夫『サフォ追慕』『二十歳の周囲』
父の首飾り-檀一雄と<天然の旅情>
見送る者の「さよなら」-蓮田善明の自裁と伊東静雄の戦後
第2章 被告席
被告席のぼくたち-柿添元『世紀末ラプソディー』と佐多稲子の自己批判
ツミヲ、オカセルノ、ヒトデアル-木下順二『風浪』
国民ぢゃないか-火野葦平の戦後のスタンス
無邪気な<歌>-徳永直『妻よねむれ』
戦はすんだといふのに-野田宇太郎『灰の季節』
谷間の詩人-渡辺修三と滝口武士
死んでごらん、よくわかる-<雨>と<雲>-淵上毛銭・黒木清次・富松良夫
傷だらけの日本よ-原田種夫日記と『ふるさとの歌』
遠いふるさと-阿南哲朗『よるの動物園』
国破れて山河あり-吉岡禅寺洞と二宮冬鳥
心眼力-中島哀浪と持田勝穂
母なる山河よ-蔵原伸二郎と丸山薫
敗戦もまた楽し-中村地平の戦後風景
捕虜ぼけ-石川利光『春の草』
第3章 監禁状態
平和な国ニッポン-日共の分裂抗争と井上光晴『書かれざる一章』
人民詩精神-秋山清『文学の自己批判』
左翼天皇制-大井広介『文学者の革命実行力』
<実感>の深度-佐多稲子『渓流』
巨大なシステム-井上光晴『虚構のクレーン』と中里喜昭『分岐』
占領政治の暗黒-松本清張『日本の黒い霧』
ユダは誰だ!-尾崎秀樹とゾルゲ事件
人間亡者化-小山俊一『EX・POST通信』
ホンモノは美しい-三好十郎『美しい人』
詩人の資格-加藤道夫『なよたけ』
流離の思ひ-川浪磐根『山さんご』
天の啓示-長崎文化連盟編『長崎-二十二人の原爆体験記録』
祈りの長崎-永井隆『ロザリオの鎖』と福田須磨子『ひとりごと』
精神の囚人運動-山田かん『記憶の固執』
廃墟の浦上天主堂-田中千禾夫『マリアの首』と井上光晴『地の群れ』
原爆詩人?-原口喜久也『現代のカルテ』
第4章 アメリカ世(ゆー)
被害者平和主義-吉田司『ひめゆり忠臣蔵』
ひめゆり伝説-新川明「戦後沖縄文学批判ノート」と中曾根政善『沖縄の悲劇』
現実の神話化-石野径一郎『ひめゆりの塔』
愛の使徒アメリカ-戦後沖縄と古川成美『沖縄の最後』
生と死の位相-大田昌秀/外間守善編『沖縄健児隊』
<敵>の正体-阿川弘之『雲の墓標』
裸の集団-江崎誠致『ルソンの谷間』
豹の目-梅崎光生『暗い渓流』
断絶する列島-前田純敬「夏草」と進一男「北緯三十度線」
アメリカ世(ゆー)の現実-霜多正次『沖縄島』
不沈空母沖縄-山之口獏と伊波南哲
沖縄への旅程-汐見純一郎『詩集 オキナワ』
第5章 独立(ひとりだち)
墓場から出てきた人-吉本隆明の戦争責任批判
戦争体験は幻影か-橋川文三『日本浪漫派批判序説』
東京へ行くな-谷川雁の<工作者>宣言
アカの私兵-谷川雁とロマン的軍隊
記録としての語り-上野英信『追われゆく坑夫たち』と各務章『地上』
ことばのまずしさ-森崎和江と「日本」
無名通信-森崎和江と河野信子の<私-探し>
もう一人のノラ-中村きい子『女と刀』
近代への呪術師-石牟礼道子『苦界浄土』
<原点>と<妣(はは)の国>-「サークル村」という装置
この世の極楽は-今井美佐子『めだかの列島』
第6章 落ちこぼれ
私は強情な点になる-丸山豊と<不快な昭和>
落ちこぼれ-筑紫びと=安西均
詩人になりたい-川崎洋『はくちょう』
大地の耕作者-松永伍一と<ふるさと>
女たちの場所-野田寿子と片瀬博子
なつかしい人格-伊達得夫と湯川達典
もう一つのエチュード-那珂太郎の詩と音楽
ノタレジニガシタイ-森澄雄の俳句の後景
出発なんておよそない-礒永秀雄の<正当詩>の試み
戦後詩の磁場-詩誌「鵬(FOU)」の詩人たちと「詩学」の嵯峨信之
第7章 ノスタルジア
故郷喪失-斯波四郎『山塔』
ひとりのstranger-江藤淳『成熟と喪失』と島一春『無常米』
自由な劣等性-富島健夫『黒い河』と小堺昭三「基地」
ピン、ポン、パン-宇野鴻一郎『鯨神』
性豪-川上宗薫『或る目ざめ』
牧師の子は-田中小実昌『ポロポロ』
大人の童話-泉大八「ブレーメン分会」
労働文学コメディ-佐木隆三『ジャンケンポン協定』
バッカジャナカロウカ-野呂重雄『天国遊び』
立ち戻れ、火の海に、母に-宗左近『炎える母』
凄絶な幻想-一色次郎『青幻記』
第8章 デラシネ
デラシネの旗-五木寛之『さらばモスクワ愚連隊』『青春の門』
寄留者(sojourner)-中園英助『裸者たちの国境』
ハードボイルド-生島治郎『傷痕の街』
漂着者-後藤明生『挟み撃ち』
[パッ][チュイ](蝙蝠)-飯尾憲士『ソウルの位牌』
伝言-鈴木召平『墓山の凧』
沖縄、ニッポンではない-竹中労『琉球共和国』
同化と異化のはざまで-大城立裕『カクテル・パーティー』
沖縄の位相-谷川健一『沖縄・辺境の時間と空間』
日本が見える-知念栄喜『みやらび』と儀間比呂志/新川明『詩と版画 おきなわ』
左は、オキナワン-儀間比呂志/牧港篤三『沖縄の悲哭』
ナユンド、フレモンニ-東峰夫『オキナワの少年』
歴史はくり返す?-知念正真「人類館」
第9章 夢の自衛
松風になりたい-椋鳩十『マヤの一生』『孤島の野犬』
夢の自衛-たかしよいち『竜のいる島』
脱構築-まど・みちお「ぞうさん」
もしも勇気があったら-那須正幹『ぼくらは海へ』
羅針盤-岩瀬成子『朝はだんだん見えてくる』
純潔志向のヒーロー主義-戸川幸夫『高安犬物語』
動物王国-畑正憲『われら動物みな兄弟』
森の思想-黒田達也『岸辺の時間』と飯田栄彦『昔、そこに森があった』
メルヒェンの裏側-庄野英二の戦争体験
不埒な精神-竹崎有斐『にげだした兵隊-原一平の戦争』
方言の思弁-上田幸法『戦争・笑った』と高木護『落伍人間塾』
一途の道-前山光則・上田占魚、そして耕治人『うずまき』
スカラベ・サクレ-きだみのるの反・遠近法
アホウドリの旅-阿奈井文彦の居場所
第10章 空白
了解不能なエイリアン-島尾敏雄『死の棘』
静謐な断念-庄野潤三「愛撫」「プールサイド小景」
少年の目-岡松和夫『志賀島』
防空ずきんの思想-丸元淑生『秋月へ』
空白の円陣-林京子『祭りの場』
忘却する権利-後藤みな子「刻を曳く」
イズヲクダサイ-丸山(美輪)明宏『紫の履歴書』
原爆のボタン-福永武彦『死の島』
飢えた野良犬-野呂邦暢『草のつるぎ』
ペテロの克服-長谷川修『ふうてん学生の孤独』
魂の故郷-重兼芳子『やまあいの煙』と森礼子『モッキングバードのいる町』
機雷の形而上学-光岡明『機雷』
第11章 華
風花-中村汀女の<台所俳句>
<火>と<日>-野見山朱鳥と金丸桝一
六道・無頼-山野井喜美枝と石田比呂志
事後の短歌-安永蕗子と伊藤一彦
わたしとあなた-河野裕子と阿木津英
彼岸花の詩学-石牟礼道子・穴井太・横山白虹・松本恭子・伊藤通明
ことばの解体-中江俊夫『語彙集』
美しい願いごと-黒田三郎とH氏賞の詩人たち
球体の神話-高橋睦郎と赤江獏
祝女(のろ)と整骨師-伊藤比呂美と平出隆
第12章 ロマン的
南進の陽画と陰画-白石一郎『海狼伝』と安達征一郎『怨の儀式』
草莽の刻印-古川薫『走狗』と滝口康彦『異聞浪人記』
凜-岩井護『雪の日のおりん』と杉本章子『東京新大橋雨中図』
実存ミステリー-多岐川恭『濡れた心』『落ちる』
ルサンチマン-石沢英太郎『羊歯行』と中村光至『黒い轍』
社会派ミステリー-夏樹静子『天使が消えていく』と豊田行二『消えた三億円』
サスペンスの軽重-赤川次郎『幽霊列車』と草野唯雄『交叉する線』
ニル、アドミラリ-北方謙三『弔鐘はるかなり』と原尞『そして夜は甦る』
ユーモアSF-横田順弥「宇宙ゴミ戦争」と梶尾真冶『地球はプレイン・ヨーグルト』
SF耽美ロマン-友成純一『幽霊屋敷』と野阿梓『花狩人』
ドッペルゲンガー-佐藤正午『永遠の1/2』と酒見賢一『後宮小説』
第13章 リヴァイヴ
豚の国のシステム-村上竜『愛と幻想のファシズム』
里の思考-前田俊彦と山下惣一の場所
熊襲の末裔-藤後左右と井上岩夫の反骨
記録者たち-松下竜一・林えいだい・川原一之
革命-船戸与一・南里征典・谷克二
伝説-宮本研『革命伝説四部作』
切り裂くことば-広渡常敏『夜の空を翔ける』
ゴーストタウン-岡部耕大『肥前松浦兄妹心中』
演劇人-つかこうへい・林黒土・野田秀樹
第14章 幻景へ
うつわの感性-高樹のぶ子『その細き道』と村田喜代子『鍋の中』
海峡の光景-帚木蓬生・伊集院静・赤瀬川隼・辻仁成
脱「日本国民」-藤原新也『東京漂流』と宮内勝典『グリニッジの光を離れて』
デジタル-伊井直行『さして重要でない一日』と藤原智美『運転士』
テリトリー-又吉栄喜・長堂英吉・佐藤洋二郎
シマという装置-崎山多美と有田忠郎の「島」
内面の幻影-目取真俊「水滴」と青来有一「ジェロニモの十字架」
あとがき
索引