図書センソウ ト ヘイワ ノ ホウ000032074

戦争と平和の法 第2巻

サブタイトル1~10
編著者名
グローチウス [著]/一又 正雄 訳者
出版者
酒井書店
出版年月
1996年(平成8年)1月
大きさ(縦×横)cm
22×
ページ
p399-899,58-147
ISBN
NDC(分類)
329
請求記号
329/G88/2
保管場所
閉架一般
内容注記
1950年刊の複製 【De jure belli ac pacis.・の翻訳】
和書
目次

第2巻
法規によつて行はれる承継的取得、これには無遺言相続も含まれる
ある国民法規は不正にして、従つて所有権を移転しない、例へば難船者の財産を国庫に没収する如きことである
自然法によれば、当然自己に属するものを取得するために他人の財産を受取る者は、財産を取得する。これはい
無遺言相続は如何にして自然から由来するか
両親の財産のあるものが、自然法によつて、当然子に属すべきか、その説明ならびに区別
相続において、子は死者の父母に優先する
代位相続と称せられる代理的相続の淵源について
廃嫡および相続人の廃除
私生子の権利について
遺言もなく、また詳細な法規もない時は、もし子がない場合は、祖先の財産は、その財産の以前の所有者、或は
新しく取得された財産は最近親者に与へられる
相続法規の相異
世襲王権においては相続の態様はいかなるものか
世襲王権が不可分なる場合は、長子が選ばれる
人民の同意によつてのみ世襲とされる王権は、疑ある場合は、分割され得ない
かゝる王権に対する権利は、最初の王の後裔を越えては継続しない
それは私生子に与へられない
かゝる王権においては、同親等の場合は、男系が女系に優先する
男系の間では、長子が優先する
かゝる王権は相続財産の部分であるか否か
王権樹立の時に、他の事柄において行はれるやうな相続形式が確定されたとの推定がなされること、第一、自主
第二、藩領的王権なる場合
直系血族相続とはいかなるものか、そしてその権利の継承はいかなる性質のものか
直系父系親族の相続はいかなるものか
常に最初の王に対する近接性を考慮する相続
子が王権を相続し得ないやうに、これを廃除し得るか
何人が王権を自己およびその子のために抛棄し得るか
相続に関する本来の意味における裁判は王にも人民にも属せず
父が王権を有する以前に生れたる男子は、その後に生れたる男子に対して優位すべきである
他の法規によつて王権が継承されたことが明かでない限り、上述の原則が行はれる
長子の男子は次子に対して優先するや否や、その説明ならびに区別
同様に、王の生存する弟は、王の兄の男子に対して優先すべきや否や
王の兄弟の男子は、王の伯父に対して優先すべきや否や
王の男子の男子は、王の女子に対して優先すべきや否や
男子より生れたる年少の孫男子は、女子より生れたる年長の孫男子に優先すべきや否や
兄より生れたる孫女子は、弟に対して優先すべきや否や
姉妹の男子は兄弟の女子に優先すべきや否や
兄の女子は弟に優先すべきや否や
通常万民法より生ずると言はれる取得について
多くの権利は万民法より発すると言はれるが、正確なる意味では、これは真実ではない
池中の魚、庭の中の野獣は、ローマ法の規則と異つて、自然法によつて所有権に属すること
野獣はたとひ逃亡しても、同一なることが適当に証明できる場合は、これを捕獲した者の財産とならない
占有は道具によつて取得され得るか、またいかにして取得され得るか
野獣が王に属するといふことは万民法に反しない
その他の無主物の占有はいかにして取得されるか
宝物は自然によれば何人に属するか、これに関する法規の相違
島および添附地に関するローマ法の規則は、自然法にも万民法にも属しない
自然法によれば、河川中の島および乾渇せる河床は、河川または河川の一部を所有するもの、即ち人民に属する
自然法によれば、田畠の所有権は洪水によつて失はれない
疑ある場合は、添附地もまた人民に属する
しかしかゝる添附地は、河川以外に何等ほかの境界をもたない田畠の所有者に与へられるやうに思はれる
河川が抛棄した河岸および乾渇せる河床の部分についても同様に考へられる
いかなるものが添附地として、またいかなるものが島として考へられるべきか
添附地は何時領主に属するか
ローマ人が彼等の法規をあたかも自然法のやうに擁護する議論に対する回答
道路は自然によれば添附地を妨げる
子が母のみに従ふことは自然的でない
自然によれば、混合の結果生じたもの、或は他人に属する材料で作られたものは、共通の財産となる
たとひこの材料が悪意によつて横領されたものである場合もさうである
優位性によつて、価値少きものが価値多きものによつて吸収されることは自然的でないこと、これに関するロー
自然によれば、他人の土地の上における栽植、種蒔または建造によつて共有権が生ずる
自然法によれば占有者は、果実を自己の物と為すことを得ぬが、費用は請求し得る
悪意の占有者すら同様の権利を有する
自然によれば引渡は、所有権の譲渡のためには必要でない
以上述べたことの適用
支配権または所有権は何時消滅するか
所有権および支配権は、権利を有する者がなくなり、且つ相続者なき時に消滅する
同様に家族の権利は絶家によつて止む
また人民の権利は、人民が存在しなくなる場合に止む
この消滅は必要部分がなくなる場合に起る
人民の全体がなくなる場合に起る
人民を存在せしめる形体がなくなる場合に起る
人民の権利は移住によつては消滅しない
統治の変更によつても消滅しない、新しき王、または解放された人民に対して与へられるべき地位がいかなるも
人民が結合するならば、かゝる権利はどうなるか
人民が分裂するならばどうなるか
かつてローマの支配権に属したる権利は、譲渡されたやうに思はれないが、今は何人に属するか
相続者の権利について
征服者の権利について
所有権より生ずる義務について
他人の財産をその所有者に返還すべき義務の起源およびその性質
他人の財産より得たる利得を返還すべき義務、これは多くの例によつて明かとなる
善意の占有者は、財産が喪失した場合は、返還の義務を有しない
かゝる占有者は、残存する果実を返還する義務を有する
かゝる占有者は、他の事情の下においては、消費しないやうな場合を除いては、消費した果実を返還する義務を
かゝる占有者は、収得することを怠つた果実を返還する義務を有しない
かゝる占有者は、彼が他人に与へた財産を返還する義務を有しない。ならびに詳細なる説明
さらにかゝる占有者は、もし彼が買つた財産を売つた場合は義務を有しない
他人の財産を善意にて買つた者は、いかなる場合に、その代価またはその一部を保留し得るか
買入れた物が他人に属する場合は、これを売主に返還できない
所有者の不明な財産を占有する者は、これを何人にも移譲すべき義務を有しない
自然法によれば、恥かしき理由で受取りたるもの、またさうでない場合においては、当然のものとして受取つた
重量、数量、計量によつて計られる財産の所有権は、所有者の同意なくして移譲され得るとの見解の排除
約定について
自然法によれば約定より権利が生じないとの見解の排除
単なる確言は拘束力を生じない
自然法によれば片約は拘束力を有するが、それによつて他人は権利を取得しない
相手方が権利を取得する約定はいかなるものか
完全なる約定のためには、約定を為すものが理性を有することを要する。こゝでは自然法は未成年者に関する国
錯誤によつて為された約定は自然法によつて拘束力を有するか、有するとすればいかなる程度においてか
恐怖より為された約定は拘束力を有するも、恐怖を生ぜしめた者は約定を為した者を解放すべき義務を有する
約定が有効なるためには、約定されたことが、約定する者の権力の下にあるべきこと
自然法によれば、不正なる原因によつて為された約定は有効か
すでに、以前において、当然受けるべきものとなつてゐるものを取得するために為された約定についてはいかに
我々自身によつて約定を有効ならしめる態様
他人によつて約定を有効ならしめる態様、委任を喩越せる使節に関する論議
船主および支配人の義務はいかなる程度まで自然法より生ずるか、ローマ法の誤謬の指摘
約定が有効となるには受諾が必要である
受諾は約定した者に知らされるべきか否か
約定は、受諾以前において、約定の相手方が死亡した場合はこれを撤回し得る
約定は使者が死亡した場合これを撤回し得るか、否か
約定は他人が代つて受諾した後に、これを撤回し得るか否か
いかなる時に、約定に負担を附加し得るか
無効なる約定はいかにして有効となり得るか
原因なくして為された約定は自然法によつては無効とされない
他人の行為を約定した者は、いかなる程度まで自然法によつて拘束されるか
契約について
他人に対して有益なる人間行為の分類、第一は単純的行為と混合的行為
単純的行為は単純的善行行為と双務的行為に分けられる
ある時は当事者を分離せしめる交換的行為がある
時に利益の共有をもたらす交換的行為がある
混合的行為は、その主要素に関して混合が行はれ得る
混合的行為には、附加によるものがある
いかなる行為が契約と称せられるか
契約においては平等性が必要なこと、第一は、先行する行為に関する平等性
平等性は、事実の認知に関して必要とされる
平等性は、意思の自由に関して必要とされる
第二には、契約が交換的なるものである場合は、行為自体においても必要とされる
第三には、契約事項において平等性が必要とされること、ならびにその説明
全部善行的なる行為か、一部善行的なる行為においては、いかなる平等性が守られるべきか
売買においては、いかなる方法にて物の価格を決定すべきか、且ついかなる理由にて正しくこれを増減し得るか
自然法によれば、何時売買は完成するか、何時所有権は移転するか
いかなる独占が自然法または愛の法則に反するか
○○○
○○○
○○○
いかなる法によつて利息は禁ぜられるか
いかなる利得が利息の名で呼ばれるもののなかに入るか
このことに関する国民法の力はいかなるものか
損失補償または保険の契約においては、いかなる価値が与へられるべきか
組合の場合はいかなる評価が為されるか、組合の種類の説明
航海組合について
万民法によれば、外部的行為に関する限り、合意されたる不平等性については、何等考慮を払ふべきではない。
宣誓について
異教徒の見解によつてすら、宣誓は大なる力を有すること
宣誓を行はんと欲するといふ慎重なる意図が必要なること
宣誓の言葉は、宣誓の為される相手方によつて理解されたと信ぜられる意味において拘束力を有する
詐欺によつて生ぜしめられた宣誓は、いかなる時に拘束力を有するか
宣誓の言葉は、慣用の意味以上に拡大されるべきではない
不法行為を行ふべき宣誓は、拘束力を有しない
より大なる道徳的善を妨げる宣誓は、拘束力を有しない
不可能なる行為を行ふべき旨の宣誓は、拘束力を有しない
もし暫時不可能なる場合は如何
宣誓は、神の名において為されること、而していかなる意味において為されるかについて
しかし宣誓は、神に関聯して、他のものの名においても行はれる
宣誓は、たとひ贋神の名において為されても拘束力がある
宣誓の効果、こゝにおいて宣誓より二種の義務を生ずる。一は宣誓の時に生ずるものであり、他はその後に生ず
いかなる時、宣誓の効果として人および神に権利が生ずるか、いかなる時、神のみにこれが生ずるか
海賊または暴君に対して宣誓を行つた者は、神に対して義務を有せずとの見解の排除
不信なる者に対して宣誓を為した者は、これを守るべきか否か
人が神のみに対して宣誓を為したならば、その相続者は何等の義務もない
宣誓が履行されることを欲せざる者に対してその履行を為さざる者、またはその特性の故に宣誓に呼ばれたもの
宣誓に反して為された行為は何時無効となるか
上位者の行為は、従属者が宣誓したところのもの、或は従属者に対して宣誓された事についていかなる力を有す
宣誓すべからざることに関するキリストの教へは、いかなる種類の宣誓に正しく適用され得るか
宣誓されざる誓約のうち、いかなるものが、慣習によつて宣誓の力を有するか
最高支配権を有するものの約定、契約および宣誓について
国民法より生ずる原状回復は、王としての王の行為に属するとの見解および王は宣誓によつて拘束されぬとの見
いかなる王の行為に対して法規が適用されるか、その説明および区別
王は何時その宣誓によつて拘束されるか、また何時拘束されないか
王は原因なくして約定したことによつていかなる程度に拘束されるか
王の契約に関する法規の力について言はれてゐることの適用
いかなる意味において、王は自然法のみならず国民法によつても、従属者に対して義務を有すると正しく言ひ得
従属者が合法的に取得した権利は、いかなる方法によつて奪はれるか
自然法により、或は国民法によつて取得された権利の区別の排除
王の契約は法規であるか、何時そうであるか
王の契約はいかなる方法によつて、全財産の相続者を拘束するか
王権のみを相続した者は、いかなる方法によつて、同じ契約によつて拘束され得るか
右はいかなる程度において拘束され得るか
いかなる王の善行が取消し得、また、いかなるものが取得し得ざるかの詳細なる説明
支配権を有する者は纂奪者の契約によつて拘束されるか否か
条約および要認条約について
公的約定とはいかなるものか
約定は条約、要認条約およびその他の合意に分れる
条約と要認条約との区別、ならびに要認条約はいかなることに関して拘束力を有するかについて
メニップスが為した条約の分類の排斥
条約の分類、第一、自然法と同じ権利を設定する条約、これはいづこより生ずるか
自然法の権利以上のあるものを附加する条約、いかなるものが平等的か
不平等条約はいかなるものか、ならびにかゝるものの分類
真の宗教を遵奉せざるものとの条約は、自然法によつて許容され得る
これはヘブライの法によつても一般的に禁止されてゐない
これはキリスト教の法規によつても禁ぜられてゐない
かゝる条約に関する注意
すべてのキリスト教徒は、キリスト教の敵に対抗して条約を締結する義務がある
数同盟者が戦争を行ふ場合、いづれの同盟者を優先的に援助すべきか、その詳細なる説明
条約は黙示的に更新されると考へ得るか
一方当事者は、他方の不信によつて解放され得るか
要認条約を締結した者は、もしこれが承認されない場合は、何に対して拘束されるか、またカウディナの要認条
否認されざる要認条約は、その認知および沈黙によつて拘束力を有するとされるか否か、詳細なる説明、またル
解釈について
約定はいかにして外的に拘束力を有するか
もし他の推定を欠く場合は、言葉は、その通常の意味において理解されるべきである
術語はその術語的使用に従つて理解されるべきである
不明瞭なるか、或は矛盾せる表現の場合、或はもし推定が、自然的にそのなかに含まれてゐる場合は、推定が用
素材よりの推定
効果よりの推定
起源或は場所による前後関係よりの推定
合理的動機より抽出された推定は、いかなるものに適用されるか、しかして、それは何時、いかにして適用され
広義と狭義との区別
約定の、好意的、嫌忌的、混合的および中間的なるものへの区分
人民および王の行為に関する善意の契約と厳格なる法的契約との区別の排除
以上に述べた意味および約定の区別に従つて、解釈に関する規則が作られる
「同盟者」の名称の下には、未来の同盟者も含まれるや否や、また、いかなる程度において含まれるか、また、
一人民が他の人民の同意なくしては戦争を行ひ得ぬとの条項は、いかに解釈せられるべきか
「カルタゴ人は自由たるべし」との言葉に関して
いかなる合意が対人的であり、いかなるものが対物的であるかの相違についての説明
王と締結したる条約は、王がその王権より斥けられるも、その王との間に存続する
かゝる条約は王権の纂奪者には適用されない
ある者が最初にあることを為すべき約定を為したのに、数人が同時にこれを為した場合は、その約定は何人に属
自ら生ずる推定は、ある場合はその意味を拡張せしめること、しかしてこれが何時起るかについて
また異なる方法による委任の履行について
他の場合においては、推定は意味を制限する。しかしてこれは意思の原初的欠如(これはその矛盾より推論され
唯一の理由の終止によつて起るもの
目的物の欠如によつて起るもの
上述せる推定に関する考察
生じたる結果が意思と矛盾した時、推定は意味を制限する。これは不法なることに関して推定される
行為に関して余りにも負担の大なる場合は、推定によつて、意味を制限し得る
他の表示―例へば書類の部分が矛盾する時の如く―によつて推定は制限される
かゝる場合には、いかなる規則を守るべきか
疑ある場合は、契約の有効性のためには書類は必要でない
王の契約は、ローマ法によつて解釈すべきでない
条件を受諾する者、或はこれを申込む者の言葉は、そのいづれを一層考慮すべきか、その相違についての説明
危害によつて生じたる損害、及びそれより生ずる義務について
過失は、損害賠償の義務を生ずる
損害は、厳格なる意味における権利と牴触するものと理解される
権能が併存する場合は、厳格なる意味における権利から正確に区別すべきである
損害は果実にも及ぶ
利得の喪失の場合は、この原則はいかに適用されるか
その作為によつて第一次的に損害を生ぜしめたる者
その作為によつて第二次的に損害を生ぜしめたる者
その不作為によつて第一次的に損害を生ぜしめたる者
その不作為によつて第二次的に損害を生ぜしめたる者
かゝる義務を生ずるには、その行為にいかなる効果が必要であるか
いかなる順序によつて責任を負ふか
義務は爾後の損害にも及ぶ
殺人者の例
他人に対して暴行を加へた者の例
姦通者および姦淫者の例
窃盗、強盗その他の例
詐欺または不正の恐怖によつて約定を為さしめたる者の場合
自然法によれば、不正なる恐怖によつて約定が為されたる場合は如何
万民法によつて正しいとされる恐怖についてはいかに考ふべきか
従属者が生ぜしめた損害に対して、国家権力はいかなる程度まで責任を負ふか、こゝでは、公的支配権に反して
自然法によれば、何人も、自己の過失なくして、自己の動物または船舶が生ぜしめた損害に対して責任を負はぬ
損害は、名声、名誉に対しても生じ得る、それはいかにして償はれるか
使節権について
使節権の如きある義務が万民法より生ずる
使節権はいかなるものの間に生ずるか
使節は常に受諾されるべきか
危険なることを企てる使節に対しては、防禦することを許されるが、刑罰を課し得ない
使節を接受せざる者は、使節権によつて拘束されない
使節を接受した公敵は、使節権によつて拘束される
使節には報復権をも行ひ得ぬ
この権利は、使節が欲する場合は、使節の随員にも及ぼされる
それは彼等の動産にも及ぼされる
強制権なき義務の例
この使節権の重要性について
埋葬権について
同じ万民法から死者の埋葬権が生ずる
この権利はいづこから生じたか
埋葬は公敵に対しても当然為されるべきである
重罪人の場合は如何
自殺者については如何
万民法によつて義務を生ぜしめる他の権利には、いかなるものがあるか
刑罰について
刑罰の定義と起源
刑罰は補充的正義に関係すること、しかしていかなる方法にて関係するかについて
自然は、刑罰が何人に当然であるかを決定しないが、自然法によれば、同じ不法行為を為さざる者によつて合法
ある利益を考慮した刑罰は、人々の間においては、神が課すのとは異つて課せられるべきこと、ならびにその理
いかなる意味において、復讐は自然によつて禁ぜられるか
刑罰の有する三つの利益
加害者の利益のための刑罰、これは自然法によれば、いかなるものによつても課せられる
万民法によつて許された復讐に関する場合は、被害者の利益のためでもある
またすべてのものの利益のためでもある
福音書の法規は、この問題についていかなるものを設けてゐるか
福音書に現はれたる神の慈愛より抽出される議論に対する回答
後悔の機会の排除より抽出される議論に対する回答
刑罰の不完全なる分類の排除
たとひ万民法が許すとしても、刑罰を課することは、私人たるキリスト教徒にとつては安全でない
キリスト教徒は、また自己の発意で、訴追に熱心であつてはならない
キリスト教徒は、さらに刑事裁判官の職務を求むべきでない
刑罰のため死を許容する人意法が、権利を与へるか、或は単に不罰性のみを与へるかに対する説明、ならびにそ
内的行為は人間によつて罰し得られぬ
人間の弱さが避け得ない外的行為は、人間によつて罰し得られぬ
直接または間接に、人間社会を害しない行為は、人間によつて罰せられぬ。その説明
容赦が決して与へられぬとの見解の排除
容赦は刑法以前には許され得たことの証明
しかしすべての場合に許されるのではない
刑法の制定後にさへも許され得る
法の停止を生ぜしめるためには、いかなる内的原因が充分であるか
法の停止を生ぜしめるためには、いかなる外的原因が充分であるか
黙示的例外として、法の中に含まれない限り、法を停止すべき正しき原因は何等存しないとの見解の排除
応当による量刑
犯罪に導く原因の考察、および相互の比較
罪を犯すことを抑止すべき原因の考察、ならびに最も近き者およびある他のものに関する十戒の順序について
犯罪の素質の考察、ならびにその種々なる見地よりの考察
刑罰の応当は、犯罪者がもたらした害以上に及び得ること、ならびにその理由
刑罰における調和的均衡の観念の排除
刑罰は、より大なる慈愛が妨げない限り、慈愛によつて減ぜられる
犯罪の容易性の場合は、いかなる刑罰を課するか、また犯罪の習慣はいかなる刑罰を課し、或はこれを免れしむ
減刑に当つての寛容の使用
ヘブライ人およびローマ人が刑罰において考慮すべきであると考へたことは、上述の議論に関係がある
刑罰を課するために行はれる戦争について
単に計画されたのに過ぎぬ不法行為の故に為される戦争が正しきや否や、その詳細なる説明
王および人民は、彼等或は彼等の従属者に対して為されたのではないが、自然法に反して為されたる事のために
自然法は、汎く行はれる国家の慣習から区別すべきである
自然法は、すべてのものによつて知られるとは限られぬ神意法からも区別すべきである
自然法においては、明かなものと、明かならざるものとを区別すべきである
神に対する不法行為の故を以て戦争が行はれ得るや否や
神に関するいかなる知識が最も一般的であるか、しかしてこれが十戒の第一戒中にいかに示されてゐるか
これらのことを最初に侵犯したるものは、これを罰し得る
しかし他のものを同様に罰し得ない。これはヘブライの法からの論議によつて明かである
キリスト教を受入れんと欲しないものに対して戦争を行ふことは正しくない
キリスト教徒を、その宗教のためのみを以て残忍に取扱ふものに対しては、戦争は正しく行はれる
神意法の解釈において誤れるものに対しては同様ではない。これは権威と例によつて証明される
しかし彼等が信ずる神に対して不敬虔を示すものに対して戦争を行ふことは正しい
刑罰の分配について
犯罪行為に参加した者に対して、刑罰はいかに移行するか
共同体或はその支配者は、従属者の犯罪行為を知り、且つこれを防止し得るし、且つ防止すべきに拘らず、防止
他の場所で犯罪行為を行つたものに庇護を与へる場合も同様である
かゝる責任は、共同体或はその支配者が、犯罪人を処罰もせず、引渡もせぬ限りにおいて、彼等に生ずること、
歎願権は不運なる者に属し、有罪者には属しないこと、およびその例外
しかし、歎願者は事件の審理中は保護せられるべきである。いかなる法の下において審理は行はれるべきか
いかにして、従属者がその統治者の犯罪行為に、また共同体の構成員が共同体の犯罪行為に参加するか。共同体
全体に対する刑罰権はいかほど継続するか
刑罰は、犯罪行為の分担なくして分配され得るか否か
直接損害と間接損害との区別
犯罪を契機として生じたる損害と、犯罪の原因より生じたる損害との区別
本来的にいへば、何人も、他人の犯罪行為のため正当には罰せられ得ぬこと、およびその理由
子はその両親の犯罪行為のため罰せられ得ぬ
有罪者の子に対して為されたる神の行為に関する回答
他の近親者に対しては、なほさらに刑罰を課し得ぬ
しかし有罪者の子および近親者に対しては、他の場合においては所有し得るものを所有せしめ得ぬことが存する
従属者は、本来的には、その王の犯罪行為のために罰せられ得ぬ
同意しなかつた個人は、全体の犯罪行為のため罰せられ得ぬ
相続人は刑罰としての刑罰を受けぬこと、およびその理由
しかし、刑罰が、他の種類の債務に移された場合は、相続人も刑罰を受け得る
不正なる戦争原因について
正当化し得る原因と誘因との区別の説明
これらの二原因を欠く戦争は野蛮である
正当化し得る原因を有せず、誘因を有する戦争は、盗賊の戦争である
誤つて正義の外観を有する若干の原因が存する
例へば不確定なる恐怖の如きである
また必然的ならざる利益の如きである
また女が多数ある時における結婚の拒絶の如きである
またより良き土地に対する欲望の如きである
また他人によつて占有されてゐる物の発見の如きである
もし以前の占有者が精神異常者である場合は如何
従属せる人民の間における自由に対する欲望も不正なる原因である
他のものを、その意思に反して、その福祉のためとの口実を以て、支配せんとする意思もまた同様である
あるものが皇帝に対して与へる世界的支配の資格もまた同様であつて、これは斥けられること
他のものが教会に与へる世界的支配の資格も同様であつて、これも斥けられること
また神の命令なくして予言を果さんとする欲望も同様である
厳格なる意味では法的ならざるも、ある他の淵源から当然のものとなるものを得んとする欲望も同様である
正しからざる原因を有する戦争と、他の種類の害悪の附加された戦争との区別、およびその相異なる効果
疑ある戦争の原因について
道徳的問題について疑ある原因はいかにして生ずるか
たとひ錯誤があるとしても、心の命令に反したことを為すべきでない
判断は、事実より抽出された論議によつて、いづれかの方向に向ふこと
或はまた権威によつていづれかの方向に向ふこと
重大なる事柄において、両者いづれにも疑あり、且つ両者のいづれかを選ぶべき場合は、より安全なるものを採
従つて疑ある場合は、戦争を差控へるべきことになる
第一には、戦争は、会議によつて避け得る
第二には、仲裁によつて解決すべきである。こゝにおいてはキリスト教徒たる王の交戦国に対する義務を論ずる
第三には、抽籤によつてすら
戦争を避けるためには、果合ひは許され得るや否や
いづれの側の疑も同等なる場合は、所有者の条件が一層優位する
いづれの側も疑も同等なる場合、両当事者とも当該物を有しない時は、これを分割すべきこと
戦争が両当事者の側から見て正しく行はれ得るや否やの問題の論議および多くの区別
正しき原因のためにすら、戦争を無暴に行ふべきでないことについての忠告
戦争を避けるためしばしば権利を抛棄すべきこと
刑罰権は特に然り
特に、危害を受けた王によつても然り
王は自己および自己に属する者のためにすら、しばしば戦争を避けるべきである
善なることの選択に関して思慮の命ずる諸規則
自由と平和のいづれを欲するかについての考慮の例。これによつて人民の殺戮を避け得ること
はるかに強大であるもの以外は、処罰を差控へるべきである
余儀なき場合でなければ、戦争を行ふべきでないといふことになる
さらに、最大の好機において、最大の原因を有する場合以外は、戦争を行ふべきではない
我々の目撃する戦争の害悪
原著註
他人のために行ふ戦争の原因について
戦争は従属者のため正しくこれを行ひ得る
しかし、常には戦争を行ふべきではない
危険を避けるために、無辜の従属者を敵に引渡し得るや否や
戦争は、平等または不平等条約国のためにも正しく行はれ得る
友人のためにも正しく行はれ得る
さらに、すべての人々のためにも行はれ得る
しかし、戦争を行ふ義務は、もしあるものが自己を怖れ、或は有罪者の生命すら怖れる場合は、無視するも罪と
他の従属者の防衛のための戦争が正しきや否やの問題の詳細なる説明
戦争の原因を考慮することなき同盟と傭兵は不正である
掠奪または賃金のためにのみ兵務につくことは時に不正である
他人の支配権の下にあるものが行ふ戦争の正しき原因について
いかなるものが他人の支配権の下にあるといはれるか
もし彼等が参劃することを求められ、或は自由選択を行ふ場合はいかにすべきか
もし彼等が戦争を行ふことを命ぜられたるも、戦争の原因が不正なりと信ずるならば、兵務につくべきでない
他人の支配の下にある者が疑を有する場合は、彼等はいかにすべきか
戦争の正当性について疑を有する人民を取残し、彼等に特別の税の負担を課することは正しい
不正なる戦争において武器を執ることが従属者にとりて正しき時は何時か