開戦太平洋脱出記
序篇 開戦直前の米州
メキシコ脱出
超満員の引揚げ船客
ドル外交に誘惑
『大統領』ダニエルス
密偵がつく
引揚げ命令来る
アデオス・メヒコ!
鳴門丸に割込む
南米に道草を食ふ
頼むは無線ニュースのみ
芋が切手代
米軍艦に追はれて
秘ヱ国境紛争の使嗾
チリーの中立厳守は?
伯国外相のチリー訪問
自動車で船に駆けつく
小癪な隣りの米船
最後の港を出帆
本篇 太平洋脱出
開戦の飛報来る
覚悟の前の船員達
長航二万キロ
船名まで消す
船は北か南か?
開戦の『臨時特別号外』
船長から悲壮な訓示
蒸し暑い灯火管制
物凄い月の光が
仮寝の夜は明けた
溜飲の下る快ニュース
最高幹部会開かる
危険水域突破の準備
船のお化粧替
出た!出た!『非常告示』
不眠でラヂオ・ニュース
未曾有の痛快事
『苦しい時の神頼み』
日本に帰れるか怪しくなる
望遠鏡の総動員
『天使島に抑留か』
救命艇用食糧の準備
土産物は竜宮へ?
自沈の装置迄して
危険水域を突破す
時化とガスを歓迎
偉大な我が海軍の戦果
通風塔を取り放す
敵艦に体当り
お歳暮に『マニラ』
『敵艦見ゆ?』
小艇に寿司詰
扇風器で汗をとる
愈々最後の訓示
『敵艦が見えたぞ!』
見張りの当直開始
着のみ着のまゝで仮寝
難関突破に懸命
敵機現はる?
米海軍長官機の下を
潜水艦が浮び出た?
危機刻々迫る
天祐なる哉、暴風雨襲来?
敵艦から無電?
最大難関無事突破す
ヂク・ザク・コース
鳴門丸行衛不明の噂
一難去つて又一難来る
激浪の為め浸水
一先づ見張り当直を解く
白髪が滅切り殖えた
スピードぐつと落つ
洋上で修理
日本近海も危険?
ラヂオの前の人だかり
本格的の台風
百八十度線を越えて
クリスマスの無い年
無電室にバリゲート
正月餅を搗く
波浪に進航を妨げられる
カムチャッカ沖まで
再び非常見張り番
又出た非常告示!
酷寒に堪へる救命服装
昭和十六年は暮れる
日本近海に入る
始めて哨海船に出遭ふ
新年の遥拝式
船や飛行機に頻々と出遭ふ
犬吠崎に感激す
思ひは我が家に
山と積まれた郵便物
横浜港外に一泊
懐しい祖国の土を踏む
『お目出度う』
淋しい新聞記事
船上に起る万歳の声
淋しい上陸風景
上陸して安着の電報を打つ
『鳴門丸だけは見放してゐた』
『朝日』に出た帰朝談
鳴門会未だし
鳴門丸に謝す
後篇 むすびの言葉
大胆な奇襲作戦
米海軍の醜態暴露
溜飲一度に下る
認識の相違
米州圏確立に米国狂奔
米国の投資と中南米
南米を歴訪して感あり
守護は堅し我が祖国