図書センジュツ ゲンソク ノ ユライ ト コンゲン000015477

戦術原則の由来と根源

サブタイトル1~10
編著者名
研究会 著者
出版者
兵事雑誌社
出版年月
1914年(大正3年)3月
大きさ(縦×横)cm
23×
ページ
151p
ISBN
NDC(分類)
393.1
請求記号
393.1/Ke45
保管場所
地下書庫和図書
内容注記
和書
目次

第1 攻撃諸原則の由来と根源
攻撃の諸原則はどうして出来たのか
到る所に優勢の兵力を用ひ得ぬならば何所に之を用ふべきか
茲で更に決戦の成立した方面に就て研究するのを要する
用兵の大原則が攻撃に於ては次の如く原則として現れて居ることもまた知られる
茲で更に攻撃点なるものゝ性質を確めることが必要と思ふ
平々凡々なこと故特に記する必要がないのであるが―然しそれが却つて迷の基となつて居る
この関係からして攻撃点選定の原則は現はれたのである
所謂助攻の精神も此の用兵大原則より発見し得る
敵の成るべく大なる兵力を其の決戦方面より奪ひ取ることである
所謂助攻の動作も亦此の大原則より割り出される
第2 牽制原則の由来と根源
牽制原則の由来と根源はどうして出来た
自ら要点の我が兵力を優勢ならしめたのみでは不十分である
そこで問題は如何にせば我は必要な方面に敵より優勢な兵力を用ゐ得るかである
此の動的手段―即ち努力によつて我が要点の兵力を敵に優らしめることが牽制の原則の起因である
それ故敵より優勢な兵力を我に対せしめんと欲したら活動を要するさうして其の活動は積極的でなければならぬ
然し此の活動を行ふ方面は其の活動の効果の顕著な場所や時機でなければならぬ
此等の事はもう戦略戦術詳解等で詳しく説明した所である
牽制原則の由来と根源とを一覧表とすれば左の如きものである
第3 包囲原則の由来と根源
包囲諸原則の由来と源根はどうして出来たか
包囲は用兵の大原則を発揮する為めに考案されたものである
然し乍ら斯の如く排列するには少なくもAに比し円周率乗丈け多い兵力を必要とするのが理論である
同等若しくは寡兵を以て包囲を実行し得る方法
そこで包囲に於ける場所的優勢を占めるにはどうするかの問題となる
一部の寡弱な兵力を以て優勢な兵力を吸着せしめることにより他部に於て優勢な兵力を使用し
同正面幅に於いて敵は非常に優勢な兵力を使用し我は寡少な兵力を使用して事を弁ずるのである
是れは場所、時間等を慮外に於いての議論であるが茲に実際に於ては場所の利用、時間の利用上に於て此の余裕
此の事は奉天戦を引証すれば最も明瞭に説明が出来るのである
次に包囲を容易ならしめた原因は正面及反対翼の強硬な攻撃に依つて敵の優勢な兵力を牽制吸着―即ち敵の優勢
第三軍丈けとは謂へぬが是に近い兵力だけ実力上一時的なりとも
其の他には第三軍に当る敵が各個に戦闘を実行した為め第三軍は当面の敵の兵力相応の抵抗を受けては居らぬこ
その他には我が乃木軍の迂回を適時に発見し得なんだことである
此の外に精神的に日本軍が優勢である如く感じ其の勢力を買ひかぶつて居つたこともあらう
包囲の成功を担保するものは前述の説明の如く
是に依り包囲に関する諸原則の由来を詳知することが出来やうと思ふ
第4遭遇戦の諸原則の由来と根源
遭遇戦の諸原則は斯うして出来る
遭遇戦の発展を知らねば用兵原則の現れ来る根本を知ることは出来ぬ
遭遇戦は行軍の姿勢から発展するのである
行軍縦隊では戦闘は出来ぬ戦闘するが為めには他の是に適する隊形に姿勢を変形せねはならぬ
即ち一刻も早く戦闘の出来る隊形になるのを要する、一刻も早くと言ふ所に非常な意味がある
即に展開した軍隊の戦闘ではもはや此の特権獲得の競争を行ふ必要がない
従つて遭遇戦に現れた用兵の第一義たる優勢兵力の使用要訣は展開を速に完了するにある
第二の原則は展開を早くする要訣である
是が為め軍隊その物の姿勢には何を要求するか
展開を早くしやうとすれば展開着手前早く縦隊を分進せしめ其の先頭を並列せしめるにある
其の他展開を早く完了するが為めの手段としては
こんな種々な方法手段を要求することも要するに我は場所及時間的に敵より優勢の兵力を展開し是を以て敵の展
乃ち行軍縦隊より発展する戦闘の勝利は展開を速になし得たものゝ手に帰するのである
第5 展開が敵より後るゝことを予想し得た遭遇戦の場合に現はれた用兵の大原則の由来と根源
展開が敵より後るゝ事を予想し得た遭遇戦の場合に現れる用兵の大原則の由来と根源はどうして出来たか
展開の後るゝ事を予想し得た時は如何にして用兵の大原則に適合する様にするか
第一の方法は先づ戦闘し得るものを以て敵を支持し我が他の兵力を速に展開し準備が成つてから突進する
それ故此の場合の用兵の大原則に恰当する動作は
第二の方法は我れ先づ戦闘し得る縦隊を以て敵の展開の基礎を崩し若くは其の展開を抑制し他の部隊は速かに展
第二方法は一時は劣勢でも此の時には敵より乗せられない様にし次で我が優勢になつた上で突進するのである
第三の方法としては敵と離隔して我も敵に劣らぬ兵力を展開し其の上で突進するのである
是を前の諸方法と対照すればどんな差があるか
第四の方法としては主力は敵と離隔して展開し前衛若くは前兵等を後退せしめて、後敵の現出に乗じ突進するや
如伺にせば此の如き情況で最も優勢な兵力を使用し得るか此の策案を解決したもので
斯の如く研究し来れば遭遇戦に於ける諸般の原則は皆な如何せば最も早く
第6 攻勢防禦の諸原則の由来と根源
用兵の大原則は攻勢防禦の原則として如何に現れあるか
攻勢防禦に於ける決戦点は何所か
果して然らば茲に此の攻勢使用部隊の兵力を成るべく増大する必要が自ら明瞭となる
茲で問題は攻勢に用ゐない部隊即ち守勢地区に用ゐる兵力は何によつて決定せらるべきか
守勢地区の部隊の兵力はどんなものか
守勢地区先づ破れ防禦部隊は攻勢動作を行はぬうちに勝敗の数の定まることである
節約された優勢又は節約された結果寡少でなければならぬ
従つて用兵の大原則が攻勢防禦の原則としての現れ方は次の如くである
以上の外各地区の決定、守兵の部署に当つても亦此の大原則が現れて来る
用兵の大原則は此の如き点にまで現れて居る
左に攻勢防禦の諸原則の由来を表示す
第7攻勢防禦の諸原則の由来と根源
用兵の大原則は攻勢移転の原則として如何に現れあるや
我は敵より優勢な兵力を以て戦闘し得ることを条件として攻勢移転の時機が決せられて居る
従つて其の決戦時に於ては
従つて此の種の攻勢時機を望んで攻勢防禦をするものとせば
敵の未展開に乗じて攻勢に転ずるのも亦用兵の大原則より出た原則である
それは時間と地形とが彼我に与へる絶大な差異である
時間と展開兵力との関係
此の関係を極端にして一方は最初から展開して居たものとすれば
此の時機を捕獲して攻勢に転ぜよと教ゆるものは用兵の大原則である
そこで敵に此の困難を侵される地点を選定して利用することを勧告する
隘路後方の攻勢防禦である、河川後方の攻勢防禦である
敵の側面に突進する攻勢移転も亦此の大原則から脱化して居る
第8 高地防禦の諸原則の由来と根源
用兵の大原則は決戦の為めに高地占領法の原則として如何に現れあるや
特に有利な条件を具備する地形とは決戦の為め特に有利な地形である
此の各個撃破と言ふことの前提に於て後退配備は有意味のものである
何故に高地に於ては此の様な有利条件を具備することがあるか
高地の縁端は凸凹不斉である此のことも亦敵の為めに不利である我は之を利用し得る
そこで用兵の大原則を利用して其の精神に適はすが為め後退配備を取り得る高地は
然し敵から言へば前述の様な高地でも其の行動を慎重にし適良にし各個使用の弊に陥らぬやうに努める
その兵力使用面には何等制限がないのである
のみならず亦高地には他にも種々各個使用を免れ得る地形がある
高地後退占領の要件即ち敵が高地上に一部を以て現出し未だ確実な地歩を占めぬ中に突進して決戦す
高地後退配備の諸原則の由来は左表の通りである
第9 河川防禦の諸原則の由来と根源
用兵の大原則は河川の防禦の原則としては如何に現れあるか
用兵の大原則から見た河川
決戦場と河川との関係
何れに決戦場を選ぶとするも河川を利用して其の兵力を分割し決戦場の敵の兵力を寡弱にする
此の大々的着眼よりすれば河川の防禦要領の如きは自ら決定せられるのである
用兵の大原則を発揮する為め河川を利用するとせば其の着眼点は
此の半渡を撃つと言ふこと即ち各個に撃破するが為めの要求―充足する為めになすべきことが即ち―河川配備の
更に敵を各個に撃する為めに於ける全般の要求此の要求を詳細に研究すれば其所に河川防禦配備の大着眼は産れ
更に真渡河点を観破する為めにはどうすればよいか―是が即ち河川警戒隊の必要其の他の原則とするのである
攻勢に転ずる時機を観破することも亦成功の要素であつて河川防禦に於ける最も緊要な事であるさうして此の要
撃破行動の適良なるが為めには如何なる要求が来るべきか
其の他種々の原則の産れる具合は次の表を見れば自ら明瞭となるのである
以上の事を詳に研究すれば河川防禦の区署に於ける大方針を決定し得るのである
河川の線に出づる警戒部隊の任務兵力編組及行動も此の原則から決定し得る
主力の位置、行動等の準拠も亦此の原則から割り出される
第10 隘路防禦の諸原則の由来と根源
隘路後退配備の原則
用兵の原則は敵に優る兵力を用ゐるにある而して此の精神を発揮しやうと
是が即ち隘路後退配備の因て来つた以所である
攻勢的であつた守勢的でない
それ故どうしても攻勢を以て場所的時間的不利な境遇にある敵を斯かる境遇にない我れから進んで之を利用して
然し乍ら次の事は此の場合特に思考するのを要するのである
敵が確実に隘路口に拠点を占領せない間に是を圧倒するを要するのである
隘路後退配備の原則の由来