岩崎弥太郎
第1 人物素描
投機に手を出さなかつたこと
無人島の探検は土佐藩庁の伝統政策
坂本竜馬と意気相投ぜざりし理由
弥太郎の腕力沙汰
弥太郎外国汽船のボーイを殴る
沼間の面前で川田小一郎を殴りつける
黒田清隆との組打、西郷従道との論争
春海丸の越原船長に上衣を贈った人間味
酒樽を指して近藤廉平を誡む
半紙一枚の濫用に十五円の減俸処分
第2 土佐の国情と岩崎氏の祖先
大三菱発祥の地
土佐藩の下士階級を構成した長曾我部党
安芸党・その他の諸分子
下士階級中の異色であつた坂本竜馬と岩崎弥太郎
上代及び王長時代に於ける土佐及び安芸氏の祖先
長曾我部氏に滅ぼされた安芸氏
日本全国に於ける甲斐源氏の蕃衍及び菱形紋所の分布
四国に於ける三階菱の分布
第3 弥太郎の少年時代
弥太郎の父母及び安芸の小野家
人気の悪い井口村
弥太郎を教へた米山と寧浦
第4 中浜万次郎の帰朝とその影響
全藩羨望の的となつた「新オコゼ組」
無人島の発見開拓及び大海運侯国建設の理想
第5 弥太郎の初出府
ペリイの来航、容堂の参観
妙見山に登り星神社を誓ふ
諸大名の式日登城を見て武門政治の末路を知る
安積艮斎の門に学ぶ
在府一箇年間に於ける時勢の急転
第6 弥太郎の血気時代
弥太郎昼夜兼行して父-弥次郎の難に赴く
弥太郎の下獄
獄中算術を学ぶ
第7 弥太郎の鴨田村謫居
吉田東洋に識らる
東洋の祖先及びその生立
東洋藩主の面前にて主賓-松下嘉兵衛を殴る
東洋の海外拓殖論
東洋の積極的開国主義
弥太郎に代作させた後藤象二郎の『貿易論』
第8 階級的対立化して土佐藩の政争
勤王・佐幕・の対局から尊王倒幕・公武合体
の対局へ
吉田東洋と小南五郎右衛門との離合
吉田進歩主義内閣の支援者及びその陣容
武市半平太の三藩聯合運動
吉田東洋と武市半平太との正面衝突
吉田東洋の暗殺されるまで
東洋の横死、極右と極左との連立内閣成る
第9 恩師東洋の復讐役に選ばれた岩崎弥太郎
下横目-井上佐一郎の介添役
薩藩の抜駆に長・土・両藩の攘夷即行連盟期せずして成る
東洋暗殺後、那須信吾・大石団蔵・安岡嘉吉・三刺客の行動
井上佐一郎縊殺せらる
弥太郎復讐の志を放棄し、帰国して材木商となる
第10 後藤象二郎尊攘党を尅して師の讐を復し開成館を創立す
久光の関東下向後、京都の政情急変す
後藤内閣成り、土藩の尊攘党全く尅殺せらる
積極的開国主義の実際的経経綸
土佐半紙・材木・及び樟脳
餌摺鉢を捏ね廻すやうな藩吏のお手先商法
第11長崎に於ける後藤象二郎と坂本竜馬
後藤象二郎薩藩に使し、更に汽船購入の為長崎に赴任す
坂本竜馬の生立から『社中』及び『商社』の組織まで
後藤象二郎・谷守部・の上海密航
政敵-谷守部を悦服改論させた後藤の識見
後藤と坂本との諒解成立して海援隊の組織成る
後藤の放漫な借金政策
借金の尻拭ひ役として見立てられた岩崎弥太郎
伊呂波丸と明光丸との衝突
海援隊の供託金七万両
第12 長崎留守居役時代の岩崎弥太郎
欝陵島占領計画の失敗
対韓牛皮貿易計画の失敗
英国水夫斬殺事件と岩崎弥太郎
弥太郎の妻-喜勢子と長崎丸山の妓-老松
土佐藩フルベッキ博士の勧告に従ひその所有汽船に源氏名をつける事
第13 土佐藩少参事としての岩崎弥太郎
後藤象二郎と板垣退助
後藤の失脚と板垣の得意
岩崎弥太郎の紙幣政策
土佐藩紙幣政策の破綻
弥太郎の藩札買占
英商オールトに負うた十八万両の藩債
第14 三菱会社の創業
海援隊の供託金七万両と土佐藩の樟脳売払金十六万両
藩の密偵-石川七左衛門の懐柔
三菱独立の宣言
弥次郎の死と川田小一郎の入獄
近藤廉平を用ふ
第15 三菱会社と郵便蒸汽船会社との競争
幕末各藩の購入した汽船と明治初年の交通及び運輸
明治政府に於ける三井と海運界に於ける三菱
回漕会社と三菱会社との対立
郵便蒸汽船会社起る
第16 征蕃役と三菱会社
征韓論と征蕃論
清国の異議、英・米・の中立
三菱会社軍隊軍需の輸送に当る
征蕃役の総決算
郵便蒸汽船会社の断末魔
三菱会社公業となり政府の補助を受く
本店の東京移転及び創業時代の勉強振り
第17 外国汽船会社の征服
太平洋汽船会社の併呑
ピー・オー・汽船会社の駆逐
江華湾事変で僅々一箇月に四十万円の利得
第18西南戦争と三菱会社
西南戦争の意議及び官軍勝利の二大理由
一般航路を停止して全汽船を軍用に充つ
七十万ドルの貸下金強請
西南戦争の総決算
大久保の密偵三菱会社に入る
第19 三菱会社の擅濫
地方の荷主・小回漕業者・問屋業者・を苦めた三菱の為替事業
纔に余喘を保つた小汽船会社
三井物産を背景とする渋沢・益田・等の東京風帆船会社
メキシコ銀問題起る
貸下金総額三百四十一万九千余円、補助金年額二十九万円
第20 三菱会社蕃判の日来る
田口卯吉三菱攻撃の火蓋を切る
犬養毅『東京経済新報』により田口卯吉に応戦す
北海道開拓使官有物払下問題起る
後藤の高島炭坑経営及び岩崎家との姻戚関係
後藤漸く弥太郎に敬遠せらる
福沢諭吉熱心に岩崎弥太郎の三菱会社を支持す
福沢輸吉三菱に説いて後藤の高島炭坑を買収せしむ
板垣三田派の期待を裏切り大隈との提携を拒む
大隈の去後、政府の三菱会社に対する態度急変す
第21 自由党の三菱攻撃
三菱創業以来の勁敵、共同運輸会社現はる
改進党の組織、板垣の遭難
板垣の聡明、暴動の抑制し難きを知る
井上馨、密かに後藤象二郎と謀つて板垣の洋行費二万ドルを調達す
『郵便報知』『東京横浜毎日』と『自由新聞』との大論戦
殺気漲る『偽党撲滅』『海坊主退治』の演説会場
『自由新聞』改進党の本質を検討して堂々の論陣を張る
第22 三菱会社対共同運輸会社の競争白熱状態に入る
三菱会社最後の五分間を死守す
岡本健三郎の潜航運動
自由党の解散、大隈の隠退
第23 弥太郎の終焉、日本郵船会社の成立
両社の協定成る
黄金の巨象崩る
弥之助全汽船を品川沖に集めて焼却の決心を示す
森岡昌純・加藤正義・共同運輸会社に入る
明治・大正・の財界を凌夷しつゝゴーレムのやうな巨象が行く